富士山の弾丸登山・混雑解消へ「秘策」 山梨県、道路法の適用外す規制案を2月議会に提案

富士山頂を目指す登山者で混雑する吉田口登山道の5合目ロータリー=昨年9月2日、山梨県富士吉田市(平尾孝撮影)
富士山頂を目指す登山者で混雑する吉田口登山道の5合目ロータリー=昨年9月2日、山梨県富士吉田市(平尾孝撮影)

過度の混雑やマナー違反といった「オーバーツーリズム(観光公害)」に直面する富士山を巡り、山梨県が昨年12月、同県側の吉田口登山道で導入を目指す独自の入山規制案を打ち出した。5合目の登山口にゲートを設け、登山者数の上限を1日当たり4000人とすることが主な柱。登山道は県道だが、その一部区間を道路法上の道路から外すことで人の流れを制御できるようにし、規制を難しくしていた「道路法の壁」を乗り越えようというものだ。

入山規制案によると、5合目の登山口に登山者を規制するゲートを設置し、7月~9月初旬の開山期間中は毎日午後4時~午前2時の間、通行止めとする。これは、山小屋に宿泊せずに夜通しで山頂を目指す「弾丸登山」の防止が目的。また、登山者数の上限を1日当たり4000人とし、4000人を超えた場合は午後4時より前でもゲートを閉じる。いずれも山小屋の宿泊予約者などは対象外とする。

鍵となるのは、吉田口登山道の5合目と6合目の間にある、5合目ロータリーから「泉ケ滝」と呼ばれる場所までの約600メートルを道路法上の道路から除外する方針を山梨県が示したことだ。現状では「一般交通の用に供する道」と定める道路法が適用されるため登山者数の抑制を目的とした規制をかけることができないが、道路法の適用を外すことで規制できるという。

「道路ではないがゆえに、人の通りを制約、コントロールすることが可能になる」。山梨県の長崎幸太郎知事は、入山規制案を発表した昨年12月20日の記者会見でこう指摘した。

入山規制案ではほかに、5合目のゲートを通る際、現在は任意で1人当たり1000円を集めている「富士山保全協力金」とは別に通行料を徴収することや、安全誘導員らが迷惑行為を働く登山者に強力な指導ができる権限を与えることなども盛り込んだ。長崎知事は今月1日、通行料は2000円とする方針を示した。今年夏の登山シーズンに間に合わせるため、県議会2月定例会に必要な条例案を提出する。

■無断で山小屋に入る… 頻発したマナー違反

昨年夏の登山シーズンは新型コロナウイルス禍の落ち着きや訪日外国人客の急速な戻りを背景に、多くの登山者でごった返した。開山期間中の山梨県側の山小屋の予約は、宿泊定員をコロナ禍の時期に減らしたままの山小屋も多かったことから、5月に受け付けを始めた直後にほぼ埋まった。そうした中でクローズアップされたのが、山頂付近の混雑に加え、弾丸登山やマナー違反の頻発だった。

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