「ひとりが好き」が過半数に、コロナ禍で意識変化 ビジネスチャンスにも…

博報堂生活総合研究所の研究発表イベントに登壇する研究員=25日、東京都渋谷区(田辺裕晶撮影)
博報堂生活総合研究所の研究発表イベントに登壇する研究員=25日、東京都渋谷区(田辺裕晶撮影)

みんなと一緒より、ひとりでいる方が好き-。博報堂生活総合研究所は25日、東京都内で研究発表イベント「ひとりマグマ」を開き、新型コロナウイルス禍に伴う行動制限の余波で、ひとりを楽しむ需要が拡大していることを明らかにした。同研究所の調査でも、ひとりの方が好きと答えた人の割合は30年前より大幅に増え過半数に達しており、ひとりでもちょっとぜいたくなサービスを楽しめる新たな市場が、ビジネスチャンスになる可能性がある。(田辺裕晶)

「『ひとり』に対する見方、捉え方を、そろそろ発想転換する時期にきているのではないか?」

同研究所の石寺修三所長はイベントでこう指摘した。これまでは「孤独」や「寂しい」などと否定的にとらえられがちだった「ひとり」だが、最近は「誰かと一緒では体験できない価値」を楽しみたいという需要が広がっているという。

令和5年に25~39歳の男女を対象に実施した調査では「ひとりでいる方が好き」と答えた人は56・3%に上り、30年前の平成5年(43・5%)と比べ12・8ポイント増加した。また、「意識してひとりの時間をつくっている」と答えた人は49・1%と2倍近く(21・8ポイント増加)まで拡大している。

海外旅行や高級料理

実際、ひとりを謳歌(おうか)している人からの聞き取り調査では、海外旅行や高級ホテルでの宿泊、高級なフランス料理のフルコースなど従来は複数人で参加することが多かったイベントを個人で楽しむ声が報告され、趣味や遊びを中心に生活者がひとり時間を大切にしている実態が浮かび上がった。

ひとり好きが増えた背景には、スマートフォンや外部の騒音を打ち消すノイズキャンセリング機能を搭載したイヤホンなどの普及で、個人の時間を気軽に楽しみやすくなったことが大きい。また交流サイト(SNS)の発達で他者の情報が常時入ってくる「接続過剰」の悩みも深刻化し、その反作用で「ひとりになれる空間」の需要が高まっているとの指摘もある。

ひとりマグマ開放へ

同研究所の研究員によると、コロナ禍で自宅待機を求められる中で個人でも楽しめる娯楽がネット上などで拡散され、「ひとりのメリットに意識が向くようになった」。ただ、子育てや介護で余暇の時間を持てないことや他者の目を気にして素直に楽しめない自意識などがハードルになり、「ひとりになりたい」という強い欲求(ひとりマグマ)が蓄積されている。

サービスを供給する側も、外食などではひとりで気軽に楽しめる場所がまだ少ないのが実情だ。研究員は旅行業界で「おひとりさま参加限定の旅」の提案が増えてきたことを挙げ、今後はひとりでも高級感や満足感を味わえる〝プレミアムひとり市場〟の拡大や、ハードルを乗り越える手助けをするビジネスが出てくることで消費の活性化につながると予想する。

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