インバウンド(訪日客)の増加を見越し、国内各地でホテルの開業ラッシュが続いている。外資系チェーンが富裕層をターゲットにした高級ブランドで攻勢をかける一方、日本勢は建て替えなどで対抗する。
宿泊業は新型コロナウイルス流行で大きな打撃を受けたが、2023年から行動制限や入国管理の水際対策がなくなり、日本人の国内旅行や訪日客が急増。特に訪日客は同年10月、月別でコロナ禍前だった19年の水準を初めて超えた。
ただ、受け皿となる宿泊施設は富裕層向けが不足している。英インターコンチネンタルホテルズグループ(IHG)によると、外資系大手ホテルの客室シェアは海外では25%程度だが、日本は6%程度。日本担当幹部は「成長の余地が非常に大きく、魅力的な市場」と指摘する。同社は今後2年間で札幌や京都、長崎で高級ホテルの開業を予定している。
米マリオット・インターナショナルや米ヒルトンなどの外資系チェーンは1億人を超える会員を抱えており、客は旅先でも同じチェーンのホテルを選ぶ傾向が高い。こうしたブランド力を頼りに、不動産大手が超高層ビルにホテルを誘致する事例も増えている。23年に開業した麻布台ヒルズ(東京)やJR大阪駅北側の再開発区域に建設中のビルにも外資系高級ホテルの進出が決まっている。
日本勢もさまざまな戦略を練る。帝国ホテルは本館とタワー館を36年度までに順次建て替える計画だ。隣接地で建設中の超高層ビルでもホテルや宴会場を運営する。26年には30年ぶりに新たなホテルを京都で開業する。
帝国ホテルの定保英弥社長は「外資系の会員数は桁違いなので、(施設)数で戦うのではなく、ブランドの価値を薄めない戦略を考えていきたい」としている。
パレスホテル(東京)は、建物を所有せずにホテル運営だけを担う「マネジメント」を中心に、現在の4施設から30年までに国内外で10施設程度まで増やすことを目指す。