「日本画に足を踏み入れたような没入感」、神管理と評価される足立美術館…米国誌選ぶ日本庭園1位

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開館前に日本庭園を清掃する庭師
開館前に日本庭園を清掃する庭師

 島根県安来市古川町の足立美術館には連日、海外の観光客が多く訪れる。お目当ては、借景を含め約16万5000平方メートルにも及ぶ広大な日本庭園だ。米国の専門誌「数寄屋リビングマガジン」の日本庭園ランキングで21年連続の1位に選ばれるなど、世界的に広く知られる。

「神管理」とも評される日本庭園で記念撮影する台湾人観光客(足立美術館で)
「神管理」とも評される日本庭園で記念撮影する台湾人観光客(足立美術館で)

 昨年12月にも台湾人の観光ツアー客が訪れた。この日は強い寒気の影響で午前中から雪が降り、観光客は大興奮。雪化粧した庭園を背に記念撮影を楽しんだ。

 ツアー客の許 麗燕れいえん さん(69)は「広大な敷地の中でも一つ一つに手入れがなされており、日本人のきちょうめんさを感じる」と満足そうに話した。

 足立美術館は1970年、安来市出身の実業家、足立全康氏(1899~1990年)が「世界に誇る美術館」を目指し開館した。日本庭園があるほか、横山大観ら近現代の日本画約2000点を収蔵するなど、山陰を代表する観光地として知られる。

 人気の秘密は、広大な借景を取り入れることで実現できる、「日本画に足を踏み入れたような没入感」だ。同館はこの世界観を守るため、同専門誌が「神管理」と評価する徹底された管理に力を入れる。

 始まりは、午前7時半。専属の庭師が館内から全体を見渡し、動物の足跡や落ち葉がないかをチェック。さらに庭園と借景の境目を目立たせないよう、全体のバランスに気を配りながら松の葉の密度を調整する。

 また、仮植場には、枯れた時などにすぐに植え替えられるよう、赤松だけで400本を同時に育てている。同館の庭師として25年間働く新田真一さん(44)は「お客さんに喜んで帰ってもらうためにも毎日手入れを続け、景観を維持しています」と胸を張る。

 もう一つの大きな特徴が、美術館としては珍しい営業部があることだ。

 同館は、2003年に同誌の日本庭園ランキングで初めて1位を獲得し、翌年以降、台湾やアメリカの旅行会社への訪問営業を強化。09年には日本語に加え、中国語、韓国語、英語、フランス語の5言語に対応したパンフレットを用意し、外国人の受け入れ態勢を整えた。

 その結果、04年度に約4600人だった年間の外国人入館者数は、18年度に約4万5200人と10倍近くまで増加。20~22年度はコロナ禍で激減したものの、23年度は11月末までに2万人を超えるなど、順調に回復しつつある。

 「ここには、足を運べば必ず喜んでもらえる庭園がある」と小沢順営業課長は力を込める。海外で庭園を写真と一緒にPRしても、多くが「これほど広大で徹底的に管理された日本庭園は見たことがない」とため息をもらすためだ。「これからも、庭園の維持管理と積極的な売り込みを地道に続け、日本を代表する美術館を目指したい」と話す。(桃田純平)

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