沖縄振興予算、3年連続3000億円割れ 九州は治水対策
政府が22日閣議決定した2024年度予算案で、沖縄振興予算は23年度より1億円少ない2678億円だった。3年続けて3000億円を下回った。一方、使途の自由度が高い「一括交付金」は4億円多い763億円だった。物価高の影響を踏まえ、小幅ながら10年ぶりに増額に転じた。
一括交付金は、仲井真弘多元知事が13年に米軍普天間基地(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に向けた埋め立て工事を承認した後の14年度の1759億円をピークに減少が続いていた。内閣府は増額の理由について、足元の物価高騰を考慮したと説明した。
24年度予算案では一括交付金のうち、インフラ整備など以外に充てる「ソフト交付金」で4億円増の394億円を計上した。公共事業に使う「ハード交付金」は横ばいの368億円だったが、11月に成立した23年度補正予算の39億円を加えると実質的な増額となる。
24年度の国への予算要求を巡っては県と市長会の足並みの乱れが目立った。沖縄振興予算は基地問題を巡って国と対立する玉城デニー知事の下で減額が続いている。こうした背景を踏まえ県市長会は11月、単独で上京して国に一括交付金の増額などを求めた。
県市長会の桑江朝千夫会長(沖縄市長)は一括交付金に関し、日本経済新聞の取材に「個々の自治体の事情を説明したことで増額につながった」と述べた。玉城知事も23年度補正予算の増額に触れながら「国の財政状況が厳しいなか、配慮がなされた」とのコメントを出した。
個別の施策では観光業の人手不足対策として新たに5億円を積んだ。産業分野ではクリーンエネルギー導入のための調査や実証の費用に3億円増の7億円、スタートアップ支援事業に1億円増の2億円を盛り込んだ。
沖縄振興開発金融公庫の関連予算は15億円少ない11億円だった。新型コロナウイルス対策の資金需要を見込んだ補給金を減らした。
沖縄振興予算は辺野古移設反対を掲げる政治勢力「オール沖縄」が推した翁長雄志氏の14年の知事就任以降、減額傾向だ。政府は13年の仲井真元知事の埋め立て承認に際し、21年度まで3000億円台の確保を約束していた。期限を迎えた22年度から3000億円を下回る状況が続く。
九州、ダム予算の増額目立つ
政府が22日に閣議決定した2024年度予算案の九州域内の公共事業では、ダム向けの予算が23年度より1件少ない6件に配分された。熊本県南阿蘇村などにまたがって建設されていた立野ダム本体が完工したためだが、一方で4件が23年度より増額となった。
最も事業費が大きいのは、熊本県南部を流れる球磨川の治水対策の川辺川ダムで7%増の45億円。洪水対策の城原川ダム(佐賀県神埼市)に18%増の12億円、九州北部を流れる筑後川の水をくみ上げ、福岡県内の3ダムで活用する筑後川水系ダム群連携に8%増の8億円が割り当てられた。一方、本明川ダム(長崎県諫早市)が24%減の35億円となった。
福岡空港(福岡市)をはじめ、空港の保安検査の効率化を補助する事業にも予算が配分された。予算額は71%増の135億円。空港運営会社から申請があれば、自動で手荷物を仕分け搬送するといった保安検査機器に補助金などを出す。新型コロナウイルス禍からの航空需要の回復・増大に対応する。
国土交通省によると、保安検査員の人手不足によって保安検査場の混雑問題が生じている。4〜11月の福岡空港の保安検査場の最大待ち時間は国内線、国際線ともに40分。保安検査の効率化が緊急の課題となっている。
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