丸紅、「旅行ふるさと納税」で1000施設と連携へ

丸紅は日本旅館協会と連携し、旅行に特化したふるさと納税サービスで利用できる宿泊施設数を増やす。サイトから施設を選ぶと、宿泊時に寄付額に応じて利用料が割り引きされるサービスで、同協会が加盟旅館に参加を促す。食事などを通じて寄付額以上の経済効果が期待できる点を訴求し、2025年3月までに1000施設で利用できるようにする。
対象は丸紅が運営する「ふるさtoらべる」。旅行に特化したふるさと納税のサイトで、希望の宿泊先や寄付額を入力すると、現地で宿泊費や施設利用料の割り引きに使えるクーポンが発行される。1万円から寄付ができ、会員登録が不要な手軽さが売りだ。現地で旅館などが掲示しているQRコードを読み込んでその場で寄付することもできる。
丸紅はこのほど、日本旅館協会と連携協定を結んだ。同協会が加盟する2500超の旅館に同サービスへの参加を呼びかける。
丸紅は同サービスを22年12月から始めていたが、利用できるのは23年10月末時点で14自治体の約60施設にとどまっており、協会を通じて全国の旅館の認知度を高めたい考え。現在は比較的高価格帯の施設が多いが、中〜低価格の施設の需要も高いと見て、参加を促す。丸紅は施設向けにサービスを消費者に知らせるチラシなどを用意する。

既にサービスに参加している、鶴雅ホールディングス(北海道釧路市)の旅館「あかん遊久の里 鶴雅」(同市)の朝倉弘次支配人は「客室やロビーの案内を見てサービスを知り、寄付するケースが多い。常連のお客様が阿寒湖の環境維持につなげたいと寄付することもある」と話す。
鶴雅リゾートではこの他、5施設でサービスを導入しており、22年12月には10件、正月シーズンには20〜30件ほどの寄付があった。総額100万円以上の寄付をした人もいるという。

ふるさと納税の仲介サイト「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンク(東京・渋谷)が23年7月、ふるさと納税をしたことがあり、なおかつ今年の夏に国内旅行に行く予定のある20歳以上の約670人に、「返礼品として、旅館・ホテルの宿泊券を使いたいか」尋ねたところ、5割超が「使いたい」と答え、消費者の関心が高いことがうかがえる。
5月に新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類に移行し、旅行需要が戻るなか、宿泊施設のクーポンなど実際に現地に行く体験型の返礼品には追い風が吹く。丸紅のサービスに参加した旅館のある自治体が寄付金を観光事業に活用すればさらなる誘客につなげられるかもしれない。
総務省は10月、ふるさと納税に関する経費の対象を拡大した。寄付金が地域のために使われやすくなるよう、寄付後の事務に必要な費用も経費の対象とするなどした。宿泊料の割り引きといった返礼品は、梱包や輸送などの経費がほとんどかからないことから制度変更の影響を受けにくく、今後、消費者の関心が高まる可能性がある。
丸紅国内投資課の能登原直紀マネージャーは体験型が普及するには「まずは導入施設を増やして知名度を高めることが必要」と話す。
(鈴木大洋)