米航空7〜9月、旅行需要で増収 燃料費高など先行き懸念
【ニューヨーク=弓真名】アメリカン航空など米航空大手3社の2023年7〜9月期決算が19日出そろった。夏場の旺盛な旅行需要がけん引し、アメリカン、デルタ航空、ユナイテッド航空の3社全社が増収を確保した。ただパイロット不足が続いているほか、足元では中東情勢の悪化を受けて燃料費が高騰しつつあり、業績拡大に急ブレーキがかかる懸念が強まっている。
アメリカンが同日発表した23年7〜9月期決算は、売上高が前年同期比0.1%増の134億8200万ドル(約2兆220億円)だった。新型コロナウイルス禍の収束を見越して前期に路線を大幅に増やしたため、伸び率は小幅にとどまったが、新型コロナの感染拡大以前の19年7〜9月期を約13%上回った。
北米と欧州を結ぶ大西洋路線とアジア中心の太平洋路線が引き続き堅調だった。
ユナイテッドとデルタも国際線がけん引し、7〜9月期はともに1割超の増収を達成した。旅客収入は2社とも14%増と大幅に伸びた。
ユナイテッドはアジア太平洋地域への旅行需要が高いとして、10月から米国とアジアをつなぐ新路線を設ける。デルタも8月、米ハワイ州ホノルルと羽田空港を結ぶ直行便を新設すると明らかにした。
採算面をめぐっては、デルタとユナイテッドがそれぞれ6割、2割の大幅増益となったが、アメリカンは5億4500万ドルの赤字(前年同期は4億8300万ドルの黒字)に転落した。8月にパイロットと契約を結び直し、人件費が17.4%増えたことが響いた。夏場以降はジェット燃料の価格も急騰しており、全体の運営コストは9.4%増えた。
レジャー需要やビジネス利用の復活で増収基調が続く3社だが、今後については競争激化を警戒する声が増えている。
すでに7〜9月期も兆候があらわれている。1座席を1マイル(約1.6キロメートル)輸送して得られる「有効座席マイルあたり収入」(TRASM)は3〜6%減った。主要路線を中心に航空チケットの価格上昇が一服し、客単価が下がったためだ。
最も客単価の下げ幅が大きかったのはアメリカンで、全体の利益率悪化の一因になった。
パレスチナ自治区ガザをめぐるイスラム組織ハマスとイスラエルの対立も深刻さを増す。ユナイテッドは23年10〜12月期について全体の売上高が約10.5%増えるとみる一方、TRASMは4.5%減少すると予想する。同社幹部は中東情勢を受けた一部運休の影響を織り込んだとコメントした。
世界的な高インフレで荷動きも鈍くなっている。7〜9月期の貨物輸送収入はユナイテッドが3割減となるなど各社とも振るわなかった。先行きの需要も低調に推移するとの見方は多い。
人件費や燃料費に加え、高インフレで機材のメンテナンス費用も増える。アメリカンとデルタはコスト上昇を理由に、23年12月期通期の1株利益予想を引き下げた。
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