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東海道新幹線、ワゴン販売終了の真相 約3割で人手不足

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日経ビジネス電子版
2024年に開業60周年を迎える東海道新幹線。23年7月、車内チャイムが20年ぶりに変わったのを皮切りに、10月にはインターネット予約「EXサービス」の内容が大きく変わった。11月からはワゴン販売がなくなり、年末年始からは混雑ピーク時ののぞみ号が全車指定席になる。「還暦」を前に大変革が進む東海道新幹線の裏側には、JR東海のリテール戦略の変化もある。

東海道新幹線のワゴン販売が10月末でなくなる……。8月8日にそんなニュースが駆け巡ると、SNSでは「新幹線に乗る楽しみがなくなって残念」「喉が渇いたらどうすればいいの?」といった書き込みがあふれた。

記者も出張などで東海道新幹線を利用する際には、行きは朝食やコーヒー、帰りはビールなどを購入してきた。8月中旬に所用で東海道新幹線に乗る機会があったので、何か買うついでに、ワゴン販売がなくなることについて販売員のパーサーに聞いてみようと思い立った。ところが、自分の前にパーサーを呼び止めた客が「ワゴン販売、なくなるそうですね」と話しかけているではないか。一般の利用客でもそこまで関心が高いのかと驚いた。

東海道新幹線の利用客にとってはワゴン販売は当たり前の存在かもしれないが、全国を見回すと、珍しい存在になりつつある。JRの在来線では、常磐線の特急ひたち号と中央本線の特急あずさ号、一部の観光列車を除けば姿を消している。新幹線でも、九州新幹線と北海道新幹線では2019年3月にサービスを終了。山陽新幹線でも、のぞみ号の一部以外はサービスが行われていない。

「ワゴン販売がない列車が増える中、今まで継続していたのがすごい」と冷静に受け止める声もないわけではないが、世の中のムードとしては、残念がったり惜しんだり、戸惑いの声が多いように見える。ワゴン販売は東海道新幹線が開業した1964年から60年近く続いてきたサービスで、こういった反応は当然予想された。それでもJR東海が廃止という決断を下したのはなぜか。

「実は、ワゴン販売を行っているのぞみ号・ひかり号のうち、約3割の列車はパーサーの数が足りていない」。JR東海の新幹線鉄道事業本部で運輸営業部管理課の担当課長を務める佐藤敬範氏は、そんな厳しい現状を明かす。

1人では東京―新大阪間で1往復半

パーサーは通常、1列車に3人乗務している。内訳は、異常時に客の誘導ができる車掌資格を持つパーサーが2人、ワゴン販売のみを専門に行うパーサーが1人。ところが現状では、のぞみ号・ひかり号のうち約3割の列車では2人しか乗務できていないという。

そうなると、ワゴン販売が手薄になる。グリーン車の接客やパーサーたちの管理に1人を割くので、ワゴン販売は通常2人。11号車の準備室を拠点に、それぞれ1号車、16号車に向かって巡回する。東京―新大阪間で約3往復するのが目安だ。ところが1人減ると、16両すべてを1人だけでワゴン販売を行うことになる。

そうなると単純計算で、東京―新大阪間で回れるのは1往復半がやっと、ということになる。記者自身、次にパーサーがワゴン販売で来たら何か買おうと思っていたのに、結局降りるまで回ってこずに諦めた経験が最近、何度かある。パーサーが3往復するなら呼び止めるチャンスは6回あるが、1往復半なら2回ないし3回しかない。思った時に買えないのも当然だ。

パーサーの所属はJR東海の子会社であるジェイアール東海パッセンジャーズ(JRCP、東京・中央)。パーサーとしてJR東海からも出向者を出しているというが、人手不足は解消していない。新幹線は1両の長さが約25メートル。東海道新幹線は16両編成なので約400メートルに達する。重いワゴンを押しながら、その長さを何度も往復するのは大変な上、勤務時間帯や曜日も不規則。お世辞にも楽な仕事とは言えない。

加えて、ワゴン販売の売り上げは90年代をピークに右肩下がりだ。新型コロナウイルス禍前の2018年度の売り上げは、10年前の08年度と比べて45%減とほぼ半分に落ち込んだ。東海道新幹線の輸送量が同期間で16%も増えたにもかかわらずだ。一方、のぞみ停車駅の改札内店舗の売り上げは同じ期間で16%増。輸送量の伸びと一致している。この差は何なのか。

理由は2つあるだろう。1つは品ぞろえの差。佐藤氏によると、ワゴンに積めるのは約65品目に限られるという。売れ筋はコーヒー、お茶、アイスクリームなどで、弁当や土産物のラインアップは豊富とは言えない。例えばJRCPのウェブサイトの車内販売商品一覧を見ると、弁当は「特製幕之内御膳」、「東海道新幹線弁当」、「賛否両論 とり将弁当」、「おむすび弁当」の4つだけだ。品ぞろえでは、駅ナカの店舗に圧倒的に分がある。

2つ目は、欲しい時に買えるかどうか。東京―新大阪間の所要時間はのぞみ号で約2時間30分。ワゴン販売は6回買うチャンスがあるとしても20〜30分に1回。最近の人手不足により、パーサーが2人体制で1人しかワゴン販売できなければ、1時間に1回くらいしかない。確実に手に入れるなら、事前に駅などで買っておこうと思うのは当然だ。

もちろん、事前に買った飲み物などが早い段階で底を突き、追加で購入したいケースはあるだろう。ただ、あったらうれしいけれども、なくても困らないサービスになりつつあった。

負のスパイラルに陥っていたワゴン販売。佐藤氏は「売れるか売れないか分からないのにワゴンを巡回させるのは非効率」と話す。

そんな中、コロナ禍を経て、JR東海は東海道新幹線の付加価値向上策を練り始めた。コンシェルジュのような接客を充実させることが求められたが、それを担うのはパーサーと車掌しかいない。足元の状況に加えて今後も人手不足が見込まれる以上、中途半端な形でのワゴン販売は難しい。そういった判断で、10月末での終了が決まったのだ。

グリーン席ではモバイルオーダー開始

11月以降は、ワゴン販売専門のパーサーがいなくなり、2人体制となる。ワゴン販売はなくなるが、モバイルオーダーサービスを始め、「現行の7割ほどの商品はカバーする予定」(佐藤氏)。座席に貼られたQRコードをスマートフォンで読み込んで注文するとパーサーが持ってきてくれる仕組みだが、グリーン席に限られる。

ワゴン販売と比べると物販の売上高は大幅に減ると見られる。ただ現状でも「車内販売の収支だけで採算を見ていない」(佐藤氏)。実態としてはすでに、ワゴン販売で採算を取るのは難しく、車掌業務の一端を担うことでパーサーの人件費を賄っていたということだ。今後は、よりその傾向が強まることになる。

ワゴン販売の廃止に先立つ10月1日、JR東海グループでは大きな企業再編が行われた。売店など駅構内の物販を手がけていた東海キヨスク(名古屋市)と、ワゴン販売や駅弁の製造・販売を行っていたJRCPが合併し、JR東海リテイリング・プラス(名古屋市)となる。

駅ソトのライバルとの競争激化

JR東海事業推進本部の梶谷育郎担当課長は「ワゴン販売の存廃と企業再編の議論はパラレル(並行)に進めてきており、リンクはしていない」と話す。ただ結果的に、ワゴン販売から駅での事前販売にシフトさせていく意味では追い風だ。ワゴン販売を廃止して浮いた人員はリストラせず、駅売店などへの配置転換が見込まれるからだ。

梶谷氏は「コロナ禍前は東海キヨスクとJRCPが切磋琢磨(せっさたくま)する効果があったが、コロナ禍で売り上げが減り、重複する課題が明らかになった」と話す。例えば、東海道新幹線のホーム上では、飲料や土産物を販売する東海キヨスクの売店と、飲料と駅弁を販売するJRCPの店舗が隣り合わせで並んでいる。乗客にとっては、1つの店舗ですべてを買いそろえられないという手間が発生していた。

21年4月に、両社の店舗を一体化した「ベルマートキヨスク」を名古屋駅新幹線上りホームにオープンしたところ「売り上げは好調」(梶谷氏)。名実ともに両社が一体となることで、こうした店舗統合を今後も検討していくという。東海キヨスクの一部店舗も人手不足で休業を余儀なくされており、JRCPとの統合は渡りに船と言える。

加えて、自動販売機の拡充も進める。例えばSNSでは「シンカンセンスゴイカタイアイス」として話題だったワゴン販売のアイスクリーム。22年7月に東京駅の東海道新幹線ホームに自動販売機を設置したが、今後は他駅への拡大を検討する。ちなみに、ワゴン販売のアイスが固かったのはドライアイスで冷やしていたため。売店での販売で再現するのは無理だが、自販機なら近い食感になるそう。なお、新幹線車内に飲料やアイスの自販機を設置する考えはないという。以前、飲料の自販機を設置していたが、車内を移動してまで購入する人が少なかったからだ。

このように、JR東海としてはワゴン販売を廃止しても、駅での事前販売を増やすことでグループシナジーの最大化を目指す。ただ、もくろみ通りにいくかは未知数だ。

というのも、東海地方(愛知県、静岡県など)を除けば、JR東海グループの小売店舗は限られているからだ。例えば東京駅では、東海道新幹線の改札内にある売店と八重洲側の商業施設「東京駅一番街」だけ。「グランスタ東京」などJR東日本グループの商業施設、大丸東京店のデパ地下「ほっぺタウン」などで弁当を買う人も多い。関西も同様で、新大阪駅ではJR東海グループの店舗は新幹線の改札内に限られる。駅の大半を占める商業施設「エキマルシェ新大阪」「アルデ新大阪」はJR西日本グループである。

JR東海もポイントサービスに参入

JR東海は10月にグループ商業施設の共通ポイント「TOKAI STATION POINT」を立ち上げた。サービス開始時のポイント付与は商業施設に限られるが、今後はJR東海リテイリング・プラスの売店にも対象を広げていく予定だ。

すでにJR東は「JREポイント」、JR西は「WESTERポイント」を立ち上げており、後発となる。ただ、強みが1つある。10月から東海道新幹線のインターネット予約サービス「EXサービス」のチケットレス乗車でたまるようになる「EXポイント」と相互交換できるようになった点だ。担当するJR東海事業推進本部の小林丈通担当課長は「ポイント経済圏で囲い込む意図はないが、スマホアプリに便利なクーポンや情報を配信し、利用を促進していきたい」と話す。

ただ、EXサービスのうち、年会費がかかる「エクスプレス予約」では、利用区間に応じてポイントがたまり、1000ポイントでのぞみ号・みずほ号のグリーン車にアップグレードできる「グリーンプログラム」がヘビーユーザーの支持を集めてきた。今年の12月末をもってこのプログラムが廃止されることについては不満の声も出ている。

10月1日は、ポイント制度だけでなく、割引額も含めてEXサービスが大きく変わる節目だ。サービスが拡充される一方で、ポイントだけでなく割引額が大きく減る点も、物議を醸している。

(日経ビジネス 佐藤嘉彦)

[日経ビジネス電子版 2023年9月14日の記事を再構成]

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