サイクルレース「定着」へ奮闘 ツール・ド・九州開催まで1カ月

ツール・ド・九州」開催を前にコースを確認する実行委員会関係者=大分県日田市
ツール・ド・九州」開催を前にコースを確認する実行委員会関係者=大分県日田市

福岡、熊本、大分3県で10月6~9日に開かれる自転車ロードレースの国際大会「マイナビ ツール・ド・九州2023」まで1カ月に迫り、準備が大詰めを迎えている。安全確認やライブ配信の用意のほか、観戦スポットや屋台の設置などで盛り上げる計画。九州初の大規模自転車ロードレースを成功させて大会定着を目指すだけでなく、欧米からの観光客誘致に弾みが付くかも注目される。

8月下旬、実行委員会や日本自転車競技連盟の関係者らが3県のコースをたどり、道路の安全などの最終確認を行った。コース上には複数の山があり、視察した同連盟の齋藤晃一郎事務局次長は「スタートとゴール地点が異なる道を100キロ近く走り、初めて開催するには選手にとっても主催者側にとっても大変なコース」と語った。

大会は10月6日、北九州市の小倉城周回レースで開幕し、7~9日に福岡、熊本、大分で各100~140キロのコースを選手が駆け抜ける。誘客効果を広げようと幅広くコースが設定され、福岡では朝倉市や東峰村など豪雨被災地を、熊本や大分では雄大な景色が広がる山間部を選んだ。国際自転車競技連合の公認レースで、九州経済連合会や開催県などが実行委を構成している。

これまでに出場18チームのうち12チームが発表され、福岡や大分を拠点とするチームのほか、オーストラリア、タイ、マレーシアなどのチーム名が挙がった。動画投稿サイト「ユーチューブ」でのライブ配信ではヘリコプターやドローン(小型無人機)、バイクなどで臨場感や迫力ある映像を撮影し、世界にアピールする。

3千人が沿道警備

スポンサー確保が一つの課題だったが、大会意義の浸透や協賛企業同士の交流が生まれるなどの利点から、現在までに約80社が集まった。大会事業費は約8億円で、協賛金や主催県の予算などでまかなう。交通整理や観客誘導を行うボランティアも約2千人の確保にめどがたった。沿道警備にあたる人数は、自治体職員や警備員なども含め約3千人に上るという。

大会の競技ディレクターを務める英国人のグラハム・ジョーンズ氏は「ロードレースは多くの人に支えられている。人々の理解や協力を得ることに加えて、観戦した人から『自転車レースっていいぞ』と声が上がることが継続開催には求められる」と話した。

経済効果30億円

日本政策投資銀行九州支店は、訪日客を含めた観客数を12万4千人と想定し、経済波及効果は関連旅行商品を含め約30億7900万円と試算した。

実行委ではスタートやフィニッシュ地点、阿蘇神社(熊本)などの観光地に観戦スポットを設ける計画で、屋台なども含めて大がかりな会場設営を予定している。大会事務局次長の仲谷隆造氏は「今からの最大の課題は観客集め。単なる自転車競技大会ではなく、レース以外も含め観客が楽しめる準備をしたい。(福岡の)どんたくや山笠のようなお祭りにならないと続かない」と気を引き締める。

九州が課題とする欧米からの観光客誘致に向けては、九州観光機構が事務局を務める「ディスカバー九州推進委員会」が4月から観光地を自転車で巡る旅行商品の販売を始め、8月までに欧米約40人を含め国内外約170人が参加した。秋以降も受け付ける予定で、レースが誘客につながるかもポイントになる。

九経連は来年以降の継続開催と3県以外のコース設定も目指す。九州がサイクルツーリズムの地として根付くかは、初回の盛り上がりにかかっている。(一居真由子)

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