中国、日本のビザ免除復活困難 「相互主義」要求 他2カ国は再開

日本と中国の国旗(ロイター)
日本と中国の国旗(ロイター)

【北京=三塚聖平】中国政府が、新型コロナウイルスの流行を受けて停止した日本に対する査証(ビザ)免除措置の再開に難色を示している。中国渡航に支障が出ているため日本側は回復を要望するが、中国政府は中国人の訪日でも同様に免除する「相互主義」を新たに要求。早期再開が難しい事態となっている。

中国は2003年から滞在日数15日以内のビザ免除措置を日本人に認めていたが、コロナ禍で20年春に一時停止した。現在、中国に短期出張や観光旅行に行くにもビザ申請が必要だ。

日本国際貿易促進協会(会長・河野洋平元衆院議長)の訪中団は7月上旬、王文濤(おう・ぶんとう)商務相と会談し、ビザ免除再開を要望した。同行筋によると、王氏は「日本に対して互いにビザを免除する協議を提案した」と述べ、中国へのビザ免除が再開条件になると事実上表明。日本政府関係者は「相互免除は今の状況では検討できない」と指摘する。

一方、中国政府は7月26日からシンガポールとブルネイに滞在日数15日以内のビザ免除措置を突如再開した。ビザ免除はコロナ禍前、両国と日本に認めていた措置で、日本だけが再開見送りの形になっている。

シンガポールの外交事情に詳しい関係者は「人口規模の違いもあり、中国にビザを免除していないが、中国側が態度を急に軟化させた」と明かす。対応に差をつけ、関係が悪化している日本に圧力を与えているとの見方も一部にある。

中国外務省の毛寧報道官は7月27日の記者会見で、日本への対応が異なることについて「日本側とも意思疎通を保っている」と述べるにとどめた。

中国に渡航する日本人からはビザ取得手続きに疲れた声が上がる。日中交流事業に携わる男性は「今年は既に2回もビザをとった。東京にある中国のビザ申請サービスセンターは混雑していて数時間も待った」と説明。日本の両親が観光で訪中するためにビザ取得手続きを手伝った日本企業の北京駐在員男性は「既に退職した会社の細かい情報も記入しなければならないなど手続きが煩雑で、もう二度とやりたくない」と語った。

中国を巡っては、7月1日にスパイ行為の取り締まり強化に向けて改正された反スパイ法が施行され、3月には同法違反容疑でアステラス製薬の日本人男性社員が拘束されている。これを受け、訪中を懸念する日本人も増えている。

中国、2カ国のビザ免除再開へ 日本は停止続く

会員限定記事会員サービス詳細