和歌山・白浜のインバウンド回復 水際措置撤廃で中国人が急増

外国人の海水浴客も見られる和歌山県白浜町の白良浜=7月4日
外国人の海水浴客も見られる和歌山県白浜町の白良浜=7月4日

関西有数の観光地として知られる和歌山県白浜町にインバウンド(訪日外国人客)が戻ってきた。新型コロナウイルス禍で激減していたが、水際措置が撤廃されたことを受け、今春以降急速に回復。特に、コロナ禍前に多かった中国からの旅行者が6月に入り急増した。関係者はさらなるインバウンドの増加に期待をかけている。

聞こえてくる中国語

白い砂浜で有名な同町の白良浜(しららはま)は「本州一早い海開き」として5月3日から海水浴場を開設。6月下旬、浜辺を行き交う多くの人たちから中国語が聞こえてきた。

中国・北京から訪れた李牧然さん(39)は白浜に来たのは初めてといい、「ここはいい。静かで清潔」と感想を話した。上海から来た男性は「日本にはこれまで何度も来たが、ここは美しい」と満足げ。家族とともに来た武漢の少年(15)も「すごく好き」と声を弾ませた。

南紀白浜観光協会が運営する「まちなか総合案内所しらすな」のまとめでは、案内所を訪問した外国人は今春から増加。1、2月はそれぞれ30人台だったが、3月に71人、4月に101人、5月に213人、6月は284人に増えた。外国人のうち中国人は3、4月にはそれぞれ数人だったが、5月に97人、6月に201人と急増した。

白良浜のライフセーバー、富岡正登(まさのり)さん(49)は「土日曜日には日本人が増えるが、平日は7、8割がインバウンド」と打ち明けた。

「コロナ禍前と同じくらい」

町内の宿泊施設では6月に中国人宿泊客が爆発的に増加した。

町内約20カ所のホテル・旅館で構成する白浜温泉旅館協同組合によると、中国人宿泊客は2、3月は200人台と300人台だったが、4月894人、5月963人と増加。6月は前月の3倍以上の3095人と激増し、外国人宿泊客のうち中国が半分以上を占めており、香港(1341人)、台湾(209人)、米国(206人)と続く。

6月の外国人宿泊客数はコロナ禍前の令和元年同月の約76%となる5835人で、中国人は約85%にまで回復した。

白浜温泉旅館協同組合理事長で旅館「紀州・白浜温泉むさし」の沼田久博社長はインバウンドについて「円安やコロナ禍後の旅行ブームもあり、増えているのではないか」とし、「感覚では数はコロナ禍前と同じくらい」という。町内の大型宿泊施設の予約担当者は「週末になると国内客が増えるが、平日はインバウンドが10~15%を占めている」と説明する。

中国からの入国は新型コロナの陰性証明書が必要だったが、4月5日にワクチン接種証明書の提出でも可能になった。さらに同29日からはワクチン接種証明書などの提出も撤廃。5月8日からは新型コロナの感染症法上の位置づけが5類に移行し、すべての水際措置がなくなった。こうした影響で白浜町でも中国人旅行者が急増したとみられる。

町長「大きな期待」

町のまとめでは、令和元(平成31)年の外国人宿泊客は中国人が4割近くを占める10万4843人だったが、コロナ禍で激減。令和3年502人、4年9401人と落ち込んでいた。

井澗(いたに)誠町長はインバウンドの急増について「待ち望んでいたことで、大きな期待を寄せている」と力を込めた。(張英壽)

早くも夏気分 本州一早い海開き、和歌山

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