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徳島県が東京に置く官民連携のアンテナショップ「Turn Table(ターンテーブル)」の利用客が昨年度、過去最多の6万人に達し、2018年のオープン以来初の黒字となった。宿泊施設も備えた、全国的にも珍しい「泊まれるアンテナショップ」だが、当初は4000万円近い赤字に。レストランの新メニューの開発や旬の徳島産の食材をそろえたフェアを行い、収支の改善にこぎつけたという。(山根彩花)
東京での発信を強化しようと徳島県は18年2月、東京都渋谷区神泉町にターンテーブルをオープンさせた。民間企業が所有する物件を約2億3000万円かけて整備。県が約4600万円で借りた建物を約1600万円で転貸借し、事業者に運営させている。
5階建ての施設は1階テラスが県産品を販売するマルシェで、1、2階は県産食材を用いた料理を提供するレストランとなっており、2~5階には宿泊施設が併設されている。藍染めや県産木材を使った家具を置いたシングルルームやツインルーム、ドミトリーを備え、1泊数千円から利用することができる。
JR渋谷駅から徒歩10分という好立地にあり、18年度の利用者は3万1581人と目標(3万人)を達成したが、飲食施設での利用が思うように伸びず経常利益は3796万円の赤字に。20年には国内で新型コロナウイルスの流行が本格化し、宿泊部門の利用者が大幅に減少する事態となった。
経営改善に向け、21年度にマルシェの充実を図り、昨年度はなると金時やスダチなどの県産食材の旬ごとにフェアを開催。レストランでは新たに121種類のメニューを開発し、白ナス「美~ナス」を丸ごと使ったボロネーゼや、半田そうめんをアレンジした「徳島ちゃんぽん」などを提供した。
人気ユーチューバーがレストランのメニューを味わう動画が15万回再生されたり、テレビ番組のロケ地として使用されたりしたこともあり、飲食・物販部門の売り上げは約7000万円に上った。また、「全国旅行支援」や都民を対象にした割引キャンペーンを活用し、宿泊者数は5095人と前年度の2倍超に拡大。トータルの利用者は6万822人で68万円の黒字となった。
徳島県もうかるブランド推進課によると、今年4、5月の施設利用者は約7割をインバウンド(訪日外国人客)が占めた。レストランの利用客についてはリピーターが多い傾向にあるといい、ターンテーブルでは今後、食事を楽しみながら、阿波おどりなど徳島の文化に触れてもらうイベントも企画している。
同課は「新たな徳島グルメの開発も続け、東京から徳島に足を運んでもらうきっかけをつくっていきたい」としている。