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コロナ禍の収束で観光客が急回復するハワイが揺れている。今年の観光客数は、過去最多に並ぶペースで推移する。オーバーツーリズム(観光公害)対策で、人気観光地では予約制の導入が広がるなど、現地の一大課題となっている。(ニューヨーク 小林泰裕)
ハワイへの観光客数は、コロナ禍の収束によって急増した。人口約140万人に対し、州外からの観光客数は1000万人規模に上る。コロナ禍の2020年は、過去最高だった19年(約1040万人)比で7割以上少ない約270万人だったが、22年には約920万人まで回復した。23年1~5月の観光客数は19年とほぼ同じ水準で推移する。
皮肉にも、ハワイ大の調査によれば、コロナ禍で閉鎖中だった人気観光地、ハナウマ湾(20年3~12月)の海水透明度は、感染拡大前に比べて約60%改善していた。他の地域でも、サンゴ礁の生態系が回復した。観光客が増えて、環境が再び悪化するのではないかとの懸念が住民らの間で高まっている。
ハナウマ湾では21年4月から、ダイヤモンドヘッド州立自然記念公園では22年5月から、それぞれ予約制が導入された。いずれも、旅行者数を絞って自然への負荷を和らげるためだ。ハワイ周辺の海域では21年から、イルカ保護のため、ハシナガイルカの50ヤード(約45メートル)以内で泳ぐことを禁止している。
渋滞解消への取り組みも進む。6月30日には、オアフ島で約75年ぶりとなる鉄道「スカイライン」が一部営業を開始した。総工費の高騰など問題点も指摘されるが、脱炭素への貢献期待もある。
ハワイ州議会では今年、州観光局の解体・再編を求める法案が提出された。観光推進政策を改め、より自然保護を重視した政策を推し進めようという動きだ。6月中の議会での可決は見送られたが、廃案にもならなかった。ハワイは、「環境保護において世界のトップランナー」(観光経済に詳しい東京女子大の矢ケ崎紀子教授)。課税強化などさらなる規制の行方に注目が集まりそうだ。