映画やドラマを撮影するロケ地として札幌市の人気が高まっている。撮影経費補助やエキストラ募集など市の手厚い支援に加え、「雪が積もる大都市」を求めるアジアの需要などが背景。札幌が舞台となった国内外の映画やドラマがヒットし、ロケ地巡りを目的とする観光客が増加。市の担当者は「さらに誘致を進めたい」と意気込む。
札幌市中央区の中島公園内にある札幌市天文台では4月下旬、記念撮影する外国人の姿があった。あまり市民に知られていなかった天文台が観光スポットになったのは昨年11月に始まった米配信大手ネットフリックスのドラマ「First Love 初恋」が契機。
札幌を舞台にしたラブストーリーで主演の満島ひかりと佐藤健がデートするシーンで使われた。市は昨年12月から天文台や札幌駅などロケ地巡り用の地図2万部を無料配布。約1カ月でほぼなくなり、中国語と英語版の配布を進める。
天文台職員の布施隆久さんは「昨年冬から一気に観光客が増えた。台湾やシンガポールからの人が多い」と笑顔で話す。
映画やドラマのロケ地を巡るロケツーリズム誘致に力を入れる札幌市は2012年から、市が舞台の作品に最大1000万円を補助する制度を始めた。19年度は14件、21年度は「初恋」など13件に計約3520万円を補助。エキストラや撮影に協力する施設の募集も行う。
関心はアジアからも。札幌が舞台のフィリピン映画「Kita Kita(キタキタ)」(17年公開)が大ヒット。18年には新千歳―マニラの直行便が開通し、20年度は17年度比2・7倍に当たる約4万人のフィリピン人が札幌に宿泊した。
ロケの支援を行う札幌フィルムコミッションの李嘉児(り・かい)係長は「壮大な自然の中で撮影できる北海道でも特に札幌は宿泊や交通の利便性が高い」と説明。映像配給や広告業の従事者数は政令市で4位(16年時点)、市民エキストラも約4000人おり、「人材の集積も大きな強み。利点を広く伝えていきたい」と力を込めた。