米ホテル大手1〜3月、そろって3割増収 アジア市場回復
【ニューヨーク=弓真名】米ホテル大手3社の2023年1〜3月期決算が4日、出そろった。宿泊需要の強さを受け、ハイアット・ホテルズなど3社の売上高は前年同期と比べてそろって3割増となった。新型コロナウイルスに関する行動規制を緩和したアジア地域での回復が全体をけん引した。各社は年間を通じて堅調な需要を見込むが、米地銀破綻などによる景気減速懸念が重荷になる可能性もある。
ハイアットが4日発表した23年1〜3月期決算は売上高が16億8000万ドル(約2250億円)と前年同期比31%増えた。最終損益は5800万ドルの黒字(前年同期は7300万ドルの赤字)だった。マリオット・インターナショナルとヒルトン・ワールドワイド・ホールディングスもそれぞれ3割の増収となった。
けん引役になっているのが、新型コロナの規制が解けたアジア地域だ。ハイアットのマーク・ホプラメジアン最高経営責任者(CEO)は4日の決算会見で中国市場に関し「航空便の正常化と旅行者向けのビザ発給が円滑に進めば成長が続くだろう」と述べた。
マリオットではアジア・太平洋地域(中国除く)のホテル1室当たりの収益力を示す「RevPAR」(フランチャイズなどを含む)が114.64ドルと前年同期の2倍以上に高まった。感染抑止のための「ゼロコロナ政策」が長引いていた中国も、1〜3月期のRevPARは78.3%増の76.06ドルに回復した。RevPARは売上高を宿泊可能な部屋数で割った数値で、ホテル各社の収益力を測る指標として用いられる。
レジャー需要は依然として堅調だ。カード大手アメリカン・エキスプレスの1〜3月期は国際カード事業における旅行・娯楽の取引高が前年同期比で58%増加した。ジェフリー・キャンベル最高財務責任者(CFO)は「国をまたぐ旅行や娯楽は新型コロナ禍からの回復が他の分野に比べて遅かったため、まだ成長途中にある」と話す。
根強い旅行需要を踏まえ、ホテル大手3社は23年12月期の通期業績予想をそろって上方修正した。ハイアットは、フランチャイズなどを含むRevPARが前期比12〜16%増えると予想。2月に発表した予想の下限と上限をいずれも引き上げた。
一方、米地銀の相次ぐ破綻が消費に与える影響を懸念する声も聞かれた。ヒルトンのクリストファー・ナセッタCEOは4月26日の決算説明会で「現実的に考えて、23年7〜9月期から10〜12月期にかけて勢いが減速すると想定している」とコメントした。
商業不動産向けデータサービスを手掛けるコースター・グループでホテル業界などを担当するヤン・フライタグ氏は「限られた供給先に需要が集中しているため、不景気の影響が表に出ていないだけの可能性もある」と指摘する。
関連費用は上昇を続けている。旅行予約サイト「ホッパー」によると、23年初の航空運賃は22年の同時期と比べて約20%、ホテル料金は50%以上、値上がりした。価格の高騰が続けば需要の低迷につながる可能性もあり、今後は需要の変化に合わせた価格設定がより重要になりそうだ。
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