GW本番、あの手この手の観光業界の人手不足対策

旅行しながら働けるサービスを利用し、旅館「街道浪漫 おん宿 蔦屋」で夕食の配膳業務に従事した男性=3月24日、長野県木曽町(おてつたび提供)
旅行しながら働けるサービスを利用し、旅館「街道浪漫 おん宿 蔦屋」で夕食の配膳業務に従事した男性=3月24日、長野県木曽町(おてつたび提供)

マスク着用が任意となるなど新型コロナウイルス対策による制限が大幅緩和された今年のゴールデンウイーク(GW)が29日、始まった。新型コロナの感染症法上の位置付けが連休明けに5類へ移行するのを控え、宿泊施設の予約状況はコロナ禍前の水準に迫る勢い。また、円安などで割高な海外を避け、国内でのレジャーを楽しむ人も増えそうだ。インバウンド(訪日外国人客)の急回復も重なり、京都や大阪ではホテルの稼働が急上昇。一層の労働需給逼迫(ひっぱく)も懸念される中、観光業界はあの手この手の人手確保で繁忙期を乗り切ろうとしている。(田村慶子)

宿泊施設もコロナ禍前の水準

「GWはほぼ満室の日もある」

久々のにぎわいに笑みがこぼれるのは、リーガロイヤルホテル京都(京都市下京区)の広報担当者。4月29日~5月7日の客室稼働率は4月24日時点の予約ベースで約8割。ホテルグランヴィア大阪(大阪市北区)も同日時点で約7割といい、いずれも外国人比率はコロナ禍前水準まで回復する見通しという。

JTBはGW(4月25日~5月5日)の国内旅行者数を前年の約1・5倍となる2450万人と推計する。平成31年比2%増とコロナ禍前を超えた。一方、海外への旅行者は20万人で前年の4倍と急増するも、31年比では21・5%にとどまる見通しだ。出費を抑えられる国内旅行を選ぶ傾向が強く、訪日客が急回復する中、国内では観光人材不足の懸念が強まっている。

細分化して労働力に

三重県鳥羽市が発行した短時間勤務の求人カタログ。制作にはリクルートが参画した(リクルート提供)
三重県鳥羽市が発行した短時間勤務の求人カタログ。制作にはリクルートが参画した(リクルート提供)

そこで、地域を挙げて人手確保に乗り出しているのは、市内に約140軒の旅館・ホテルがある三重県鳥羽市。地元住民を対象に1日4時間程度の仕事に求人をしぼることで、雇用のミスマッチを防いでいる。短時間勤務の求人はコロナ禍で中断していたが、今年から本格再開した。宿泊が最大の産業である同市は、自治体が6年ほど前から慢性化する人手不足に取り組んできた。宿泊施設では1日8~9時間勤務が一般的だが、食事の盛り付けや布団上げなど仕事を切り出し、短時間にすることで「家事との両立や体力不足でこれまで仕事を諦めていた高齢者や主婦らの雇用につながっている」(同市担当者)という。

人手を増やしたい宿と、旅館や農園で働きながら旅行を楽しみたい人をつなぐサービスも生まれている。おてつたび(東京都渋谷区)はマッチング事業を展開。国内旅行人気からGW中における24日時点の求人掲載日数は前年の1・55倍に急増した。学生が住み込んで働くリゾートバイトと異なり、同サービスの平均利用日数は9日と短い。週末だけ働く求人もある。「主婦の利用も多く、仕事をきっかけに観光業界への就職や滞在先に移住する人もいる」(担当者)。

OB活用策も

コロナ禍による離職で旅行業界も人手不足にある。そこで日本旅行業協会(JATA)が普及を目指しているのが、米国で一般的な「ホームエージェント型旅行業者代理業者」だ。旅行業務取扱管理者の資格を持つ旅行業OBなどが、所属する旅行会社から委託を受けてツアーなどの販売を代行する旅行業者代理業者として個人登録し、自宅などを拠点に旅行会社の営業や販売を代行してもらう仕組みで、登山旅行が専門のアルパインツアーサービス(千葉県四街道市)はコロナ後の国内旅行の復調に合わせて導入している。

旅行業者代理業者は近年、インターネット上だけで旅行商品を販売するサービスの台頭で減少が進んでいるが、コロナ禍でさらに加速した。JATAによると平成25年に837社だった代理業者は令和4年に537社と3分の2程度に減少。「ホームエージェント型」の普及がその減少に歯止めをかけ、対面での旅行相談などを求める客の受け皿になると期待されている。

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