羽田空港〝幻のエリア〟3年越しの復活へ「スイング運用」

開業後、2週間足らずで閉鎖されている羽田空港第2ターミナルの国際線エリア=東京都大田区
開業後、2週間足らずで閉鎖されている羽田空港第2ターミナルの国際線エリア=東京都大田区

開業から2週間足らずで閉鎖された羽田空港第2ターミナル国際線エリアの復活が目前に迫っている。東京五輪を控えた令和2年3月に整備されたものの、新型コロナウイルス感染拡大に伴う航空需要の減少で約3年間塩漬けに。この「幻のエリア」は、国際線の旅客が少ない時間帯に国内線の搭乗ゲートに切り替えることで効率的な運用ができるのが特徴だ。ただ密輸や不法出入国を防ぐ観点から、切り替え時には毎回、施設内の厳重なチェックが必要になる。

「午前中は国際線、午後は国内線の運用を想定している」

空港施設を管理する日本空港ビルデング(東京)の担当者が明かす。新しい国際線エリアは、国内線専用として運用されていた第2ターミナルの南側に拡張する形で設けられた。

一部の駐機場(スポット)と搭乗ゲートは時間帯によって国際線と国内線に使い分けることができる。これは「スイング運用」と呼ばれる。

令和2年3月29日に供用を開始。感染拡大に伴い、わずか13日間で閉鎖に追い込まれた。施設の目玉だったスイング運用は一度も実施されず、〝宝の持ち腐れ〟となった施設は後に、テレビドラマやCMの撮影などで使われてきたという。

同社によると、3年の国内線の旅客は約2584万人とコロナ禍前の4割ほど。国際線に至っては約78万人と例年の約4%にまで落ち込んだが、近年は正常化に向けた動きが加速。旅客数は回復基調にある。

昨年5~7月には、日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)が相次いで羽田発着の国内線を通常運航にほぼ戻しており、インバウンド(訪日外国人客)も順調に回復している。このペースで進めば、早ければ今夏にも、第2ターミナルの国際線エリアが再び日の目を見る可能性がある。

ただ、スイング運用を巡っては課題も。航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏は「切り替え時には、関税法や出入国管理法、航空法に基づき、相当厳重なチェックが行われるはずだ」と指摘する。国内線の旅客が違法薬物や危険物などをロビーのゴミ箱の裏や椅子の下などに隠し、国際線の旅客が受け取るといった事態も想定されるためだ。

国際線から国内線への切り替えは施設内のシャッターなどで仕切られる。その際、国際線と国内線の旅客や荷物が紛れ込まないようにする必要がある。日本空港ビルデングは「密輸防止の観点から、鏡などを利用して椅子の裏面なども含めて確認を行う」(担当者)としている。広いロビーをくまなく、どこまでスムーズに検査できるかが今後の課題となりそうだ。

関空を運営する「関西エアポート」によると、平成6年の開港以来、スイング運用で目立ったトラブルは報告されていない。だが、切り替え時に不審物などが見つかった場合は、空港の機能が一時的に停止する恐れもある。那覇空港では今年3月22日、国内線制限区域にある航空会社のラウンジでカッターナイフが見つかり、区域内にいた搭乗客が再び保安検査をする必要が生じた。この結果、発着する60便以上に遅れや欠航が出ている。

第2ターミナルの国際線エリアでは、スイング運用だけでなく、保安検査場に所持品などを載せるトレーが自動で進むスマートレーンや、コンピューター断層撮影(CT)型の手荷物検査装置など最新技術も導入される。このターミナルを発着するANAの担当者は「日本と海外との往来が増えていく中、(国際線エリアが)再開される日が楽しみだ」と話している。(大竹直樹、写真も)

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