開業相次ぐ「アパートメントホテル」 急回復するインバウンド狙う

「MIMARU東京 八丁堀」の「ポケモンルーム」(コスモスイニシア提供)
「MIMARU東京 八丁堀」の「ポケモンルーム」(コスモスイニシア提供)

新型コロナウイルス禍で激減した訪日観光客(インバウンド)の急回復を見込み、多人数の中長期滞在者向けの「アパートメントホテル」の開業が首都圏などで相次いでいる。一般的なホテルとは違ってキッチンや2段ベッドなどを備え、自宅のようにくつろげる快適な空間が売りだ。和の文化を強調するほか、海外でも人気が高い日本発のアニメの世界観を楽しめるなど多彩な部屋を用意。参入企業が増え、市場が拡大しつつある。

カビゴンがベッドでお出迎え

東京・八丁堀にある11階建てのアパートメントホテル「MIMARU(ミマル)東京 八丁堀」。宿泊客を迎えるエントランスにはのれんがかかり、いかにも和風の演出が施されている。

「MIMARU東京 八丁堀」のエントランスには、のれんが設けられている=東京都中央区(宇野貴文撮影)
「MIMARU東京 八丁堀」のエントランスには、のれんが設けられている=東京都中央区(宇野貴文撮影)

4階の客室のドアを開けると、床にある獣の足跡に目を奪われる。その先をたどっていくと、人気アニメ「ポケットモンスター」のぼっちゃりとしたキャラクター「カビゴン」のぬいぐるみがベッドの上で気持ちよさそうに寝ているのに驚かされる。

ここはホテルの名物となっている「ポケモンルーム」。広さは38平方メートルで定員は4人、2段ベッドもある。宿泊料金は1泊1室当たり6万7500円~だ。

東京、京都、大阪で「MIMARU」を展開し、アパートメントホテル市場を牽引するのは大和ハウスグループのコスモスイニシア(東京)。運営は子会社のコスモスホテルマネジメント(同)が行う。家族連れなど多人数のインバウンドを主なターゲットとし、平成30年2月に第1号施設「MIMARU東京 上野NORTH」を開業した。

MIMARUにはマンション開発のノウハウが生かされ、室内には障子や木目の建材を使った和風のデザインを施し、キッチンも備える。滞在中は近くのスーパーで食材を買って、室内で調理ができる。

水際対策の大幅緩和で戻るインバウンド

コロナ感染拡大で令和2年5月には開業済みの15施設のうち11施設の休館を余儀なくされたものの、3年4月に新規開業を再開。昨年6月には「MIMARU東京 八丁堀」の近くに「MIMARU東京 STATION EAST」をオープンした。

「MIMARU東京 STATION EAST」のスイートルームには座敷が用意されている=東京都中央区(コスモスイニシア提供)
「MIMARU東京 STATION EAST」のスイートルームには座敷が用意されている=東京都中央区(コスモスイニシア提供)

ファミリーレストラン「サイゼリヤ」に直結し、全85室の7割の客室に2つのベッドルームを採用。最上階の14階では、座敷でくつろげるスイートルーム(68平方メートル・定員4人、1泊1室当たり7万5000円~)を用意した。

今年6月には京都に新たに1施設を開業し、計28施設1470室に拡大する。7月の宿泊予約はすでに6割以上が埋まっているという。将来的には3000室にまで増やす計画だ。

市場拡大に期待

日本政府観光局(JNTO)の統計によると、日本政府が水際対策を大幅に緩和した昨年10月以降、インバウンドの数は増加。今年2月は147万5300人で、コロナ禍前の平成31年同月比56・6%にまで回復した。

コスモスホテルマネジメントの藤岡英樹社長は宿泊客の回復について「来年上期の途中で正常な状態に戻るのではないか」と期待を寄せる。

MIMARUに追随する形でアパートメントホテル事業に参入する動きもある。「Minn(ミン)」を展開する宿泊事業運営支援のSQUEEZE(スクイーズ、東京)は今年2~3月、金沢、東京、京都に計4施設を順次開業。計19施設に増やした。

不動産コンサルティング事業などを手掛ける霞ヶ関キャピタル(東京)傘下の霞ヶ関パートナーズ(同)も「FAV(ファブ) HOTEL」を展開。3月1日に10施設目を東京・両国にオープンした。

MIMARUで先行するコスモスホテルマネジメントは「市場が活性化するのはありがたいことだ」(藤岡社長)と歓迎する。ビジネスホテルや旅館などに続くインバウンドの新たな選択肢が、どこまで伸びるか注目される。(宇野貴文)

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