中国人客「爆買い」復活は期待薄 水際緩和で受け入れ準備は本格化

北京市の繁華街を歩く市民ら。脱マスクの動きがじわじわと広がっている=2月24日(共同)
北京市の繁華街を歩く市民ら。脱マスクの動きがじわじわと広がっている=2月24日(共同)

政府が中国からの渡航者に対する水際対策を今月から緩和したことを受け、航空・ホテルなど観光関連業界で本格的な受け入れ再開に向けた動きが出てきた。中国側の日本への団体旅行の停止措置は続いているが、早くも日本航空は中国便の大幅増便に踏み切った。もっとも、中国では新型コロナウイルス禍で貯蓄志向が強まっているとされ、以前のような「爆買い」は期待できない可能性もある。

「緩和が進めば増便が可能になる。今後もその流れは変わらないと思う」

水際対策緩和に伴い8日に増便を発表した日航の担当者は中国路線の今後の正常化に期待を込める。

現在、日本と中国本土を行き来する同社の旅客便は週13往復でコロナ禍前の1割程度だ。だが、今回の増便で令和2年春からストップしていた北京発羽田行きが復活。これを含め26日から順次、便数が増えてコロナ禍前比で5割超の水準まで戻る。

全日本空輸も間もなく増便計画を公表する予定。現状の中国便は空席が目立つ状況だが、「中国便は貨物需要があるので旅客が乗っていなくても利益が出る」(同社担当者)こともあり、先手を打って訪日客の本格回復に備える。

全国でホテルを展開する西武・プリンスホテルズワールドワイドでは、2月の利用状況が室数ベースで平成31年同月比の約9割まで回復。外国人客は人員ベースで約7割に戻った。コロナ禍前は外国人客のうち中国人が3割程度を占めており、中国人訪日客が本格的に戻れば、コロナ禍前水準の回復が視野に入る。既に現地のエージェントに売り込むための旅行プランやプロモーションの検討を開始。担当者は「(訪日客に人気の)サクラが咲く季節なので(中国側も)動き出すとありがたい」と話す。

ただ、中国人客の増加が訪日外国人観光客(インバウンド)消費の完全回復に直結するとはかぎらない。みずほ証券によると、中国人民銀行が昨年10~12月に実施した家計のアンケートでは、「消費」や「投資」ではなく、「より多くのお金を『貯蓄』に振り向ける」との回答が6割を超え、確認可能な2002(平成14)年以降で最多となった。背景には「ゼロコロナ」政策による収入低迷や不動産不況があるという。

同社の稲垣真太郎シニアマーケットエコノミストは「中国で消費への慎重姿勢が強まっている。訪日客数がコロナ禍前水準に向けて戻り始めたとしても、インバウンド消費は緩やかな回復をたどるだろう」と予測している。(福田涼太郎)

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