１６日に開港から１７年を迎える神戸空港（神戸市中央区）。２０３０年前後の国際化が決まり、２３年度、規模拡大に向けた整備が始動する。利便性向上へ勢いづく同空港で、就航５社中最多の発着便数を誇るのがスカイマークだ。神戸を東京・羽田と並ぶ西の拠点と位置づけ、多くのスタッフが空の旅を支える。昼夜、舞台裏で奔走する人々を追った。

■定時運航を守る

　日が昇ったばかりの２階出発ロビー。早くも家族連れらが列を成していた。

　「出発する便が多い朝は特に混み合います」と駒場辰徳・神戸空港支店長。午前８時半までに同社だけで６便が飛び立つ。年末年始などは隣接するポートライナーの改札口まで検査待ちの客でごった返すことも。

　鹿児島行きの搭乗ゲートに旅客課の森山篤志さん（３３）とマブチ・シンイチさん（４０）が立っていた。幼い子ども、介助が必要な人…。順に乗客を誘導する。

　出発時刻まで１０分を切った。森山さんは無線機と案内用のマイクを交互に口元に近づけた。マブチさんは小型の拡声器で「ご搭乗のお客さまはいませんか」と呼びかけ、走り始めた。

　搭乗手続きを済ませたのにゲートに来ない人が１人いた。トイレ、喫煙所、ラウンジ。マブチさんは隅々を確認する。保安検査場の出口で足を止めた。捜していた男性が見つかった。どうやら持ち物が検査で引っかかっていたようだ。

　「せわしなかったですね」と森山さん。マブチさんは「朝早い便では結構あります」と教えてくれた。

　予定時刻から１５分以内に出発することを「定時運航」と呼ぶ。同社の達成率は、ＡＮＡやＪＡＬなど主要航空会社中で１７年度から５年連続で１位。２人の姿に達成への思いの強さを見た。

■荷物を機内へ

　「１０２、よし！」

　ラッシュが落ち着き、屋外の仕分け場をのぞくと、ランプ管理課の原田新乃祐さん（２１）の声が響いた。

　チェックインカウンターから届く荷物を、高さ約２メートル、長さ約４・４メートルのコンテナに手際よく詰め込む。

　次に駐機場の近くに障害物がないかを確かめ、コックピットに合図を送る。翼端（よくたん）監視という作業だ。異常がなければ、コンテナを専用車両で引いて飛行機のそばへ。休む暇はない。

　荷物を積んだジェット機が滑走路で離陸準備に入ると手を振った。「お客さまと最後に接する所。振り返してもらえるとうれしい」

　付近にもう一人、オレンジ色のパドルを手にした女性がいた。パイロットに止まる位置を示す「マーシャラー」で、同課に所属する池上茉希さん（３３）。寸分の狂いも許されない。訓練を積み、試験に合格し、やっと担える。

　いずれの業務も社内で定めた資格が必要だ。ランプ管理課の関連だけでも１０以上あると聞き、驚いた。

■再入場できません

　午後８時。出発ロビーの電気が消えた。あとは到着便を待つだけだ。

　沖縄や仙台から人々が到着ロビーへ流れてくる。まだあと２時間、計９便が到着することになっている。

　旅客課の森下真菜さん（２０）が「この先は再入場できません」「お手荷物の確認を」とアナウンスしていると、１人の高齢男性が到着ロビーを出てすぐ引き返そうとした。駐車場の事前精算を失念したらしい。

　森下さんは両腕を広げて「再入場はできません」。別の精算機を案内した。

　「明確な境界があるんです」と神戸空港支店総務課の太田照代さん（４０）が一言。搭乗には、危険物を持っていないことを検査し、確かめることが絶対条件。到着ロビーを一歩でも出ると、理論上は不審物に触れられるため、検査し直さなくてはならない。

　その後、キャリーケースの忘れ物も判明。持ち主は見つかったが、既に午後１０時を回っていた。「疲れたけど忘れ物を届けられてよかった」。森下さんはそう話し、ロビーを後にした。