世界の旅客量は6月にもコロナ前回復、機体確保が難題=業界会合

世界の旅客量は6月にもコロナ前回復、機体確保が難題=業界会合
航空機リース大手のエアキャップ(ダブリン)と中国資本アバロンは16日、世界の旅客量が業界の人手不足問題も乗り越えてコロナ禍前水準に戻るのは大方の業界予測より何カ月も前倒しされそうで、早ければ今年6月にも実現するなどと予想した。資料写真、中国・上海、2020年6月撮影(2023年 ロイター/Aly Song)
[ダブリン 16日 ロイター] - 航空機リース大手のエアキャップ(ダブリン)と中国資本アバロンは16日、世界の旅客量が業界の人手不足問題も乗り越えてコロナ禍前水準に戻るのは大方の業界予測より何カ月も前倒しされそうで、早ければ今年6月にも実現するなどと予想した。航空機リースの一大拠点であるアイルランド・ダブリンで開催中の航空業界会合「エアライン・エコノミクス」で語った。
エアキャップのオェングス・ケリー最高経営責任者(CEO)は「われわれは旅客の極めて強い回復を目の当たりにしている」と発言。「私の見方では業界は今年半ばに2019年の水準に完全に戻ると思う」と語った。
アバロンはリポートで、昨年の旅客の7割回復は欧州や北米がけん引した一方、今年はアジアが成長を引っ張るとし、厳格な「ゼロコロナ」政策を取っていた中国の経済再開を挙げた。
ただ、中国の需要復活については、航空業界アドバイザーのバートランド・グラボウスキ氏は「航空会社は中国行きの便を劇的に増便してはいない。増便は正しい方向だろうが、(以前の状態に)完全に戻るには一定の時間がかかる」と指摘。コンサルティング会社アセンド・バイ・シリウムの責任者ロブ・モリス氏は「現段階では業界は中国については慎重に考える必要があると思う」と述べ、突然のゼロコロナ政策終了に伴う混乱などを念頭に「搭乗客の信頼感は重要だ」とも発言した。
データによると、中国でのコロナ感染急増の懸念にもかかわらず、春節(旧正月)を控えて同国は旅客の動きが再開しつつある様子だ。春節の旅行シーズンが始まって以来、旅客量は19年の63%まで急増している。
こうした急激な需要回復に伴い、業界が今、最も頭を痛めているのは、最も広く使用される単通路型機を需要に合わせてどのように十分に確保していくかだ。サプライチェーンの混乱で新規引き渡しが遅れていることが背景にある。整備や補修や大規模修理の工場では作業が深刻な渋滞に遭っており、既存の機体を定期就航させ続けることや予備機を使うことが大変になっている。アドバイザーのグラボウスキ氏は、こうした作業が完全に逼迫しているだけでなく、倉庫にある機体にも入念な点検が必要になると指摘した。
エアリース社のスティーブン・ウダバーヘイジィ会長は、メーカーが製造の状況や日程を「ひどく読み間違えている」と不満を述べた。
クロール・ボンド・レーティング・エージェンシーの幹部マリアン・リギ氏もロイターに対し、中国の航空市場の再開については業界は慎重ながらも楽観的だとした上で「一つはっきりしないのは、そうした需要を満たすだけの十分な機体供給があるのかどうかだ」とメーカーに圧力をかける発言を展開。エアキャップのケリー氏は、新規引き渡しの遅延で打撃を受けるリスクを恐れ、機体不足を埋めるのに18─20年物の中古機を購入しようとする航空会社が増えていると指摘した。

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