「外国人観光客5倍に」地域経済に活気 人手不足は深刻 日銀報告

観光客で賑わう浅草の仲見世商店街=2022年10月11日午後、東京都台東区(大塚聡彦撮影)
観光客で賑わう浅草の仲見世商店街=2022年10月11日午後、東京都台東区(大塚聡彦撮影)

日本銀行が12日公表した地域経済報告(さくらリポート)では全国4地域で景気判断が引き上げられ、新型コロナウイルス禍からの経済回復が順調に進んでいる状況が明らかになった。昨年10月の水際対策の緩和や全国旅行支援の開始などを経て、地方は観光需要の復活により活気を取り戻しつつある。一方、需要の急回復による人手不足感は一段と強まり、人材を確保しビジネスチャンスを逃さないための賃上げの必要性が高まっている。

「毎日必ず海外からのお客さまが宿泊しているような状況になった。街中にも人出が戻りつつある」

栃木県日光市の日光金谷ホテルの担当者は、かつての姿を取り戻し始めた市の現状を喜んだ。

同市は世界遺産「日光の社寺」など豊富な観光資源を持ち、外国人観光客からの人気も高い。同市観光協会によると、昨年10月以降、市内の観光案内所を訪れる外国人観光客数がそれまでの5倍以上に急増したといい、着実に客足が戻っているという。

さくらリポートでも同様に「外国人観光客が徐々に戻ってきており、ホテルや旅館の宿泊需要を押し上げている」(京都・宿泊)など、前向きな声が目立っている。

ただ、急速な需要回復に対応しきれず、観光業界の人手不足は深刻化している。帝国データバンクが昨年10月に実施した調査によると、人手不足を感じている「旅館・ホテル」企業の割合は、正社員については65・4%、非正社員については75・0%にも上る。

日光市観光協会の担当者は「一度離れた人材はなかなか戻ってきてくれない。稼働率を7~8割程度に抑えざるを得ない宿泊施設も多い」と漏らす。さくらリポートでも「宿泊客数が急増しているが、従業員の補充が進んでおらず、1人当たりの負担も大幅に増加している」(大阪・宿泊)との声があり、需要の高まりによる恩恵を十分に享受できていない現状が浮かび上がる。

人材を確保するには、従業員の待遇改善が必須だ。日本総合研究所の内村佳奈子研究員は「円安の影響で、外国人観光客1人当たりの旅行消費単価は増加している」と分析。この契機を生かして賃上げを行うなどして「他産業から人材が流入しやすくする必要がある」と指摘している。(根本和哉)

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