中国ビザ停止、現地赴任時期への影響を懸念

中国の国旗(AP)
中国の国旗(AP)

中国当局が日本人への渡航ビザ(査証)発給手続きを一時停止したことを受け、中国で事業を行う企業からは11日、突然の措置へ困惑の声が上がった。ビザ手続きの再開時期は不明で、従業員の中国への赴任時期に影響がでることへの懸念も出ている。

「事前の通知もなかった」。東京都中央区の旅行会社の担当者はこう語る。この会社がビザ申請書類の作成などを支援していた顧客が10日、中国への出張のために東京都内のビザ申請施設に出向いたところ、手続きを断られたという。

停止措置は、中国での新型コロナウイルス感染急拡大を受けた日本の水際対策強化への対抗措置とみられる。大手外食企業の幹部は「政治的思惑から報復措置に出るのは、えげつない」と批判。中国に工場がある自動車部品メーカーの幹部も「(入国者の)集中隔離が撤廃された矢先の措置だけに残念だ」と話した。

富士通の場合、中国の事業拠点に赴任予定の従業員が数人おり、担当者は「ビザの取得手続きを進めていたところだ。現地への赴任時期に影響が出る可能性がある」と警戒する。

一方、中国各地では「ゼロコロナ」政策の抜本的な緩和で感染が急拡大していることから、主な日本企業は中国本土への出張を極力抑えている。

三菱電機は今月1日付で中国本土への渡航を原則自粛としており、担当者は今回の措置について「現時点では影響はない」とする。大手銀行でも、中国の取引先との商談や会議はオンラインが中心になっている。

ただ、中国側によるビザ手続きの停止が長期化した場合は、日中間のビジネスに支障が生じかねない。

自動車大手は「4月の駐在員の異動に影響が出る可能性がある」と語る。各企業とも「引き続き現地とも連携しながら情報収集に努め、状況を注視する」(大手商社)との姿勢だ。

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