中国人客の〝復活〟は 旅館は「期待していない」、百貨店も慎重

抗原定量検査の会場へ移動する中国からの到着客ら=8日午後、成田空港(鴨志田拓海撮影)
抗原定量検査の会場へ移動する中国からの到着客ら=8日午後、成田空港(鴨志田拓海撮影)

中国政府が8日に新型コロナウイルス対策を抜本的に緩和したことで、百貨店など日本国内の訪日客関連業界では、中国人観光客による需要回復への期待が高まる。ただ、海外団体旅行は停止されたままで、中国からの訪日客がコロナ禍前の水準に〝復活〟する道筋は不透明だ。中国各地の感染急拡大に対応するため、日本政府は8日から対中国の水際対策を厳格化するなど、先行きが読みにくい状況が続く。

大手百貨店各社では、コロナ禍前は免税売上高の大部分を中国人客が占め、化粧品などの「爆買い」がみられていた。昨年10月に日本の水際対策が大幅に緩和されたことに加え、急激な円安で日本での買い物が割安になった追い風を背景に、中国人客は限定的ながら、百貨店業界全体では昨年11月の免税売上高はコロナ禍前である令和元年11月実績の7割弱まで回復している。

東京都心に店舗を構える大手百貨店の担当者は「中国人客が戻ることへの期待はあるが、徐々にという形になるだろう」と話す。別の大手百貨店も「中国国内での感染急拡大や日本政府の対中国の水際対策厳格化といった流れの中では、どの程度戻ってくるかは読みにくい。もう少し様子をみたい」と慎重だ。

中国人の海外旅行が解禁されたとしても、日本側も対中国の水際対策を強化している。日本政府は航空各社に中国本土との直行便を増便しないよう要請。日本航空は予定していた増便を取りやめ、中国便は週10・5往復にとどめている。担当者は「残念ながら何も状況は変わらない。中国の状況が少しでも落ち着いてくれれば…」と漏らす。

訪日客の取り込みに力を入れている大手外食企業は「中国人客は客単価などの購買力が高く、期待値は大きい」としつつ、「中国国内での感染拡大が顕著だと伝わる中では、もろ手を挙げて歓迎という状況にはない。政府は、日本への入国に当たってしっかりと審査してほしい」と注文する。

今月下旬には中華圏の旧正月「春節」(22日)前後の連休を迎える。だが、関東地方のテーマパークの担当者は「春節前後の連休や花見シーズンと重なるこの1~3月に関しては、中国本土からの来客回復には大きな期待は持っていない。半年先とか、来年になってからになるのではないか」と語った。

旅行大手JTBの担当者は、「現地の旅行会社から問い合わせは受けているが、予約には至っていない」と、中国本土からの予約状況には変化がないと明かす。中国政府は、自国民への海外旅行〝解禁〟は感染状況を踏まえて今後判断する方針で、中国人観光客の訪日需要が戻る時期について、同担当者は「さまざまな要素が複合し、予測不能な点もあるため答えるのは難しい」と話す。

京都市西京区の老舗旅館では、昨年10月の日本政府による水際対策の大幅緩和以降、他のアジアや欧米諸国の観光客から多くの予約が入っており、既に部屋が埋まっている状況が続いているという。

加えて今回の中国側の水際対策緩和が発表されて以降も中国からの問い合わせはなく、同旅館の支配人は「(中国人観光客には)特に期待していない」と話している。(森田晶宏、福田涼太郎、野村憲正)

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