1月10日再開の旅行支援に期待 人手不足で不参加の宿も

1月再開の「全国旅行支援」に不参加を決めた星野リゾートの温泉旅館「界 日光」=栃木県日光市(同社提供)
1月再開の「全国旅行支援」に不参加を決めた星野リゾートの温泉旅館「界 日光」=栃木県日光市(同社提供)

政府の観光促進策「全国旅行支援」が来年1月10日から再開される。今年12月27日まで約2カ月半にわたり実施された前回の全国旅行支援から代金補助は減るが、閑散期の底上げにつながると観光業界の期待はおおむね高い。一方、宿泊業界は人手不足に拍車がかかっており、顧客満足の観点からも面倒な予約手続きなどをなくす方がよいとして、キャンペーンへの不参加を決めた宿もある。

27日に休止した全国旅行支援による代金の割引率は40%。再開後はこの割引率が20%に引き下げられる。

鉄道やバスなど交通付きの旅行商品の場合、1人1泊あたりの割引額が最大8千円から5千円に下がる。地域限定クーポンは休日は千円に据え置くが、平日は前回の3千円から千円減額の2千円になる。期間は1月10日から3月末までを予定。ただし、都道府県に割り当てられた予算上限に達するなどすれば前倒しで終了する可能性もある。

観光庁の担当者は、補助を減額しつつ年明けのキャンペーン再開を決めた狙いについて「事業の目的は閑散期の底上げだけでなく、補助がなくなった後の需要の急減を防ぐこと」と話す。

観光業界でも、閑散期の底上げ効果を重視し、代金補助減額の影響を不安視する声は少ない。

大阪市北区のリーガロイヤルホテルの客室稼働率は、今年10~11月で平均約78%と9月比で20ポイントほど大きく伸びた。販売室数の約30~35%がキャンペーンの利用客だったという。今回も「春休みに向けた起爆剤になる」(広報担当者)と再開後のキャンペーン参加も早々に決め、「学生の卒業旅行用にグループ向けのプランを新たに用意したい」と意気込む。

例年1~2月は中華圏旧正月にあたる「春節」休暇を楽しむ中国からのインバウンド(訪日外国人客)が底上げ役を担っていた。

足元では中国の「ゼロコロナ」政策は緩和されたものの、12月30日には対中国の水際対策が再び強化された。「中国人客がすぐに戻るかは不透明」(大阪市内ホテル)として国内客を呼び込めるキャンペーンに参加を決めた宿は多い。

ただ、最大の懸念は人手不足で宿泊業はとくに深刻だ。

10月18~31日に帝国データバンクが実施した調査によると、人手不足を感じている企業は全国1万1632社のうち、正社員では51・1%、非正社員は31%。正社員はコロナ禍前の令和元年10月の50・1%を超えた。特に宿泊業は65~70%台と深刻で、業種別では正社員・非正社員とも2位になっている。

京都市内で複数の宿泊施設を展開する運営会社は「求人を出してもなかなか集まらず、いまだに半分ほどの施設が休業を余儀なくされている」とため息をつく。

限られた人手の現場で従業員の負担を増やさないためにも、星野リゾートは温泉旅館「界」や高級旅館「星のや」など運営する国内宿泊施設のうち約7割にあたる計36軒で、再開後のキャンペーンに参加しないことを決めた。

参加しない施設は満室になる日も多く、代金補助の後押しがなくとも高稼働が見込める。代わりに1人1泊につき、ホテル内で飲食などに使える3千円のクーポンを配り、宿泊消費を促す。ワクチン接種済みなどの証明書提示は求めない。キャンペーン利用に当たっての面倒な手続きをなくし顧客の満足度を高める。

また、再開後のキャンペーンでは都道府県での受け付け開始前の宿泊予約分は割引対象外となるため、改めて対象とするにはいったん予約を取り消し、再予約してもらう必要がある。

担当者は不参加の最大の理由はこの手間を省くためと説明。「現状でも稼働が高い施設は再予約時に客室を取れないことがある。その上、需給に応じた変動価格制であるため、キャンペーンで割り引かれても予約取り消し前の料金を上回るかもしれない」とした。(田村慶子)

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