「道の駅」そばに高級素泊まりホテル 米マリオットの狙い

アクティビティーのサイクリングツアーでは蒜山高原の風景が満喫できる(マリオット・インターナショナル提供)
アクティビティーのサイクリングツアーでは蒜山高原の風景が満喫できる(マリオット・インターナショナル提供)

地方観光の活性化を目指し、住宅メーカーの積水ハウスと米大手ホテルチェーンのマリオット・インターナショナルがタッグを組んだ取り組みがある。地方創生事業「Trip Base 道の駅プロジェクト」。道の駅と近接するホテルを拠点にするという旅スタイルを提案しようという試みだ。11月4日にこのプロジェクトで9道府県20カ所目、中国地方では初の「フェアフィールド・バイ・マリオット・岡山蒜山(ひるぜん)高原」が真庭市の「風の家」隣接地にオープンした。

スポーツロッカー備え

狙いは、外国人観光客(インバウンド)だ。新型コロナウイルス禍の水際対策も緩和。円安もあって、旅行業界ではインバウンド復活に期待が集まる。名所を巡るタイプの旅行ではなく滞在型観光で、特に高付加価値を求める外国人観光客をターゲットにすえる。

蒜山高原は高原リゾート地として、冬はスキーやスノーボード、他の季節はトレッキングやサイクリング、乗馬などが楽しめる。酪農業が盛んで蒜山焼きそばなどのグルメなどで知られる。

フェアフィールドでは自転車やスノーボードが置けるスポーツロッカーやバイク置き場を設置し、サイクリングツアーと星空観察イベントといったアクティビティーを用意。建物は4階建てで、キングとツインの2タイプで全99室、面積は25平方メートルでシンプルな造りだ。

フェアフィールドは全99室の宿泊特化型ホテルとなっている=11月4日、岡山県真庭市
フェアフィールドは全99室の宿泊特化型ホテルとなっている=11月4日、岡山県真庭市

新しい旅のスタイル

積水ハウス専務執行役員の石井徹氏は「宿泊という選択肢がなかった地域に新たなお客さま、消費が生み出せる。名所や行楽地を巡る旅とは異なり、目的地を定めずに偶然の出会いを楽しむ、地域の魅力を味わい尽くす、そんな豊かな時間を感じられる」と語る。

日本政策投資銀行と日本交通公社が共同実施している訪日外国人旅行者意向調査では2021年10月時点で、次に旅行したい国・地域はアジア、欧米豪圏とも日本がトップだった。清潔さや食事のおいしさ、治安の良さが高く評価される。日本で体験したいことではコロナ禍前後の比較で、アウトドアアクティビティーへの関心が急上昇している。

観光庁などが推進する「アドベンチャーツーリズム」への期待も高い。自然、アクティビティー、文化体験の3要素のうち2つ以上で構成される旅行を指し、自分自身の変化や視野の拡大・学びなどを目的とし、興味関心に応じたテーマ、ストーリー性など、その地域ならではの体験を求めるのが特徴だ。

マリオットの日本・グアム担当エリアヴァイスプレジデントのカール・ハドソン氏は「水際対策が緩和された後、待ちかねたように戻ってくる姿を目の当たりにしている」とし「3年の長い待ち時間を経て、忘れがたい経験を求めて未知の場所を訪れたいと考えるはず」と分析する。

アクティビティーの星空観察イベント「スターパーティ」(マリオット・インターナショナル提供)
アクティビティーの星空観察イベント「スターパーティ」(マリオット・インターナショナル提供)

宿泊特化型が特徴

フェアフィールドは「ザ・リッツカールトン」「セントレジス」といった高級ブランドをはじめとするマリオットの30のホテルブランドの中では、低価格帯のブランドとなる。

レストランのない宿泊特化型が大きなポイント。石井氏は「道の駅の飲食施設や地域の飲食店を利用してもらうので往来や地域の人々との交流が起きる」と説明する。

インバウンド誘致を戦略として考え、受け皿となるホテルを求めていた真庭市の太田昇市長は「マリオットの存在感は大きい。世界から多くのお客さまが訪れれば真庭全体の活性化に役立つ。地域の価値を高め、住民にとっても魅力ある地域になっていけば」と期待を寄せている。(和田基宏)

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