新型コロナウイルスの水際対策緩和で旅客需要の回復に期待が集まる中、国内空港の地上職員の不足を懸念する声が高まっている。欧州では今夏、航空機の誘導や貨物積み込みを担う職員の不足が深刻化し、運航取り消しも。国内各社は採用を再開し対応を急ぐが、低調な応募に危機感は強い。
9月下旬の成田空港。夕方、便を乗り継ぐ乗客が検査場で長い列をなし、不満そうな表情を浮かべた。空港関係者は「夕方などのラッシュ時間はすでにスタッフが足りず、待ち時間はかなり長くなっている」と明かし、「海外と同じような事態が今後起こるかもしれない」と憂慮する。
欧州では新型コロナによる利用客激減で、空港関連企業は大幅な人員削減を実施した。今年に入り感染状況が改善して需要が急激に回復すると、人員不足は深刻化。ロンドン・ヒースロー空港は7月、不足を理由に旅客数の制限を決め、航空会社に新規チケットの販売停止を求めた。オランダやベルギーの空港でも同様の問題が起きた。
こうした動きに国内各社は手をこまねいていたわけではない。地上職員を雇用する「JALスカイ」や「ANA成田エアポートサービス」は需要回復を見越し、感染拡大で中止していた新卒採用を本年度から再開した。