万博起爆剤に観光振興 新たな観光ルート設立急務

大阪・関西万博の会場となる夢洲=7月15日、大阪市此花区(本社ヘリから、沢野貴信撮影)
大阪・関西万博の会場となる夢洲=7月15日、大阪市此花区(本社ヘリから、沢野貴信撮影)

2025年大阪・関西万博を観光振興の起爆剤にするため、全国の市町村長が参加する「万博首長連合」が支援の取り組みに乗り出した。首長らが集まった2日のイベントでは、万博に来場した訪日外国人客(インバウンド)に会場以外の国内観光地を周遊してもらうため観光ルートの整備が急務との問題意識を共有。万博後も観光振興を継続することも重要になる。

「全国各地の名産や文化に触れることができる観光ルートを確立し、万博開催前から発信したい」

2日に大阪市内で開かれたトークイベント「全国自治体EXPO PLL Talks」(一般社団法人「夢洲新産業・都市創造機構」主催)で、大阪府高石市の阪口伸六(しんろく)市長はこう話した。阪口氏は首長連合の会長を務めている。

阪口氏は、万博会場に加えて国内観光地を訪問してもらう「万博+1(プラスワン) パッケージツアー」を、企業などの力も借りながら実現する考えを表明。

訪日外国人客が周遊する効果を高めるため、例えば各地でそれぞれ行われている「祭り」を共通項として、複数の場所をめぐってもらうアイデアも出た。首長連合会長代行の田中幹夫・富山県南砺(なんと)市長は「首長連合に参加する627市町村の観光資源をつなぐことも万博のレガシー(遺産)になる」と力を込めた。

一方、関西経済同友会の広瀬茂夫・事務局長は「経済界からすると、(ツアー実施で)お金が回っていくかどうかが重要だ。旅行会社などを巻き込んで『プロの目』を入れて誘客しなければ、現実的に動いていかない」と指摘した。

イベントは今後、万博本番まで開催し、観光ネットワーク構築を後押しする。

日本総合研究所の若林厚仁・関西経済研究センター長は「人口減少などもあり、中長期的には日本人の国内旅行消費の大幅な伸びは見込み難い。自治体と経済界が協力し、国内観光のテコ入れや、外国人観光客の分散化などを進めることは、持続可能なツーリズムという観点からも意義がある」と評価する。

一方で万博終了後の観光振興につなげることが重要との考えを示し、「瀬戸内周遊クルーズなど、新たな観光資源の発掘と定着化を進めなくてはならない。日帰り客を宿泊に誘導する仕掛けや、旅行の新たな価値・体験の提供など、継続的な魅力のアップデートも必要になる」とした。(井上浩平)

会員限定記事会員サービス詳細