クロアチアで巨大橋が開通、中国企業が建設
【ウィーン=細川倫太郎】クロアチア南部で中国企業が建設を請け負った巨大な橋が開通した。ボスニア・ヘルツェゴビナを通過せずに、北部や中部から観光都市ドブロブニクなどに行くことができるようになる。
橋は本土とペリエシャツ半島を結び、全長は約2400メートル。地元メディアによると、総工費は5億2600万ユーロ(約730億円)で、欧州連合(EU)が3億5700万ユーロを拠出した。中国国有の道路建設大手、中国路橋工程(CRBC)などのコンソーシアム(共同事業体)が建設した。
クロアチアのプレンコビッチ首相は26日の開通式で「クロアチアにとって歴史的な日で、誇りのプロジェクトだ」と強調した。
クロアチアは南部が飛び地で、北部や中部から向かうにはボスニアを通らなければならない。ボスニアを経由しなくてもいいようにクロアチアは橋の建設に乗り出そうとしたが、ボスニアは貨物船の出入りが妨げられるなどの懸念から難色を示した。最初の計画が発表されてから、2018年に着工するまで20年以上を要した。
中国は広域経済圏構想「一帯一路」のもと、インフラ整備などで欧州で影響力の拡大をめざすが、近年、中・東欧では中国と距離を置く国が増えている。中国の人権問題への懸念や、中国からの投資がさほど進んでいないためだ。バルト3国の一つ、リトアニアは21年、中国と中・東欧の経済協力の枠組み「17+1」から離脱を宣言した。
一方、クロアチアは中国に接近している。プレンコビッチ氏は5月、中国メディアのインタビューで「中国との政治、経済の関係の深化を楽しみにしている」と語った。クロアチアは23年1月から通貨ユーロを導入することが決まり、中国からの投資と合わせ経済発展に弾みをつけたい狙いがある。
バルカン半島の小国モンテネグロでは、中国が融資し大規模な高速道路の建設が進んでいる。ただ、工事は大幅に遅れ、コストが増大し、モンテネグロは21年4月にEUに債務の肩代わりを求めた。今回のクロアチアの橋はEUが主な資金の出し手のため、債務危機に陥るようなことはないとみられている。
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