[ 2007 MARCH ]

エールフランス航空/KLMオランダ航空
最大座席数、2つのゲートウェイを持つ欧州キャリアに

エールフランス航空/KLMオランダ航空エールフランス航空(AF)とKLMオランダ航空(KL)は2004年5月に統合を発表、06年11月には日本支社を完全統合しました。
IATAの国際線輸送量ランキングで3位と4位(2005年WATSまとめ)の合併により、日本発のヨーロッパ・キャリアとして供給量は現在、最多に。また、ヨーロッパに2ヶ国のゲートウェイを持つキャリアとなりました。エールフランス航空/KLMオランダ航空東日本地区法人営業部長の中島良夫氏に、統合のメリットと今後の動向をお伺いしました。

[総合で、旅客利便・サービスがいっそう充実]

最も実感する総合効果は

中島氏(以下、中島) なんといってもキャパシティが増えたことです。
自社運航の座席数はヨーロッパ行きの全日空とほぼ同程度になりました。成田が27便、中部が7便、関空が14便で、日本発のヨーロッパ・キャリアとしては、ビジネスクラス、エコノミークラス併せて最大の座席数を提供していることになります。

 また、ゲートウェイが2つになったこともメリットです。日系と同じコンセプトで市場に訴えることができるのですから。また、販売店側もそして消費者にとっても旅行の幅を広げていただくことができますね。。

販売各社は統合のメリットをどのように活かせば良いですか

エールフランス航空中島氏(中島) ビジネスクラスでは確実に“カタ・カタ”ができます。パリとアムステルダムの両方に立ち寄るビジネス旅客はもちろん、帰国のCDG発が満席の場合もAMS経由をご利用いただけます。周遊型の旅行商品にも便利です。

 周知の通り、ビジネスクラス需要が増加し、弊社では昨年夏期で6%〜10%近く伸びました。予約がとりにくい状況だからこそ、選択肢があるのは自信を持って勧めていただけるのではないでしょうか。それに“カタ・カタ”で組み合わせのできる予約クラスが決まっているとはいえ、AFとKLでクラス設定が違うので、例えばAFのDはKLのCまたはJで利用できます。つまり、Jの料金でDを購入できるのもポイントといえます。

 このほかCDG、AMS以遠の路線も訴求力があります。特にKLはヨーロッパのみならず、アフリカ方面でも思わぬところに路線網を持っています。ナイロビも強いし、AFの本拠地でもあったトリポリもKLに引き継いでいます。また、CDG経由のMADが満席でもAMS経由で、という選択もできるのです。

 また、AFで東京のトリプルデイリーで夜便があるのもメリット。帰国便にも夜便があるので、特に他のヨーロッパの都市からCDGで乗り継ぐ場合、朝一番のフライトでないと間に合わなかったのが、夕方発でも可能になり、1日余分に時間を確保できます。KLの利用者にも訴求ポイントとなるでしょう。

旅客サービスでの強みは何でしょうか

(中島) AFのビジネスクラスでは全便がフルフラット。シートピッチは155センチメートル、シート幅は24センチメートルと広い上に、マッサージ機能も付いているので、より快適なフライトを楽しんでいただけます。

 それに、ファーストクラスもあります。欧州路線でファーストクラスがあるのは、AF、JL、NH、BA、LH、LXだけ。シートピッチを広げるなど、いい座席を入れるほどキャパシティは減りますが、それでもニーズに応えるために、アッパークラスの設備を整えているのです。

 KLのビジネスクラスはフルフラットになっていませんが、ボーイング777が170度、ジャンボは150度。ただ、大阪は全て777に移行されており、東京発は777とジャンボですが、こちらのジャンボも777への移行準備が始まっています。

 KLはなんといってもソフトに定評があります。旅客が快適だと思うことを提供する“引いたサービス”が評判で、日本人のお客様からご好評をいただいています。押し付けがましく提供するのではなく、コールを受けたらすぐに伺う誠実な対応を適切に行なっている成果です。

2つのIATAプレートがある限り、それぞれのシェアを拡大

今後、どのような展開が望ましいと思いますか
(中島) AF、KLそれぞれのマーケットを保ちながら、相乗効果でシェアを拡大することを目指します。それぞれがIATAプレートを持っている限り、AF、KLで市場を増やすことは必然なことです。両社を足して以前と変わらないシェアを維持するだけでは、意味はありません。
ユーロが強い中、ロードファクターが良くてもユーロ建ての収入では日本市場は低く見えます。
提供座席が減少するかと懸念する声もありますが
(中島) 日本市場の座席は減っている動きはありますが、それは円が弱いから数を絞っているわけではありません。ヨーロッパから日本へ行こうという旅客が増えるため、座席の割合がヨーロッパの方が多くなってしまうのです。ビジネスクラスの旅客は、ヨーロッパからが55%。以前は60%〜70%が日本からの出張者でした。市場の原理が反映されているだけだと思います。
日本経済が好転し、旅行会社にとって航空運賃が値上がりするとの期待感がありますが

(中島) その動きはありますね。ただ、理由は燃料の問題で、景気の好転はその次。燃油の値段が1ヶ月で倍くらいになり、その時点で予算は赤字になってしまうです。だからYQを上げるのですが、国交省がもはやこの値段はサーチャージじゃないとして、航空各社にIATAと協議して運賃を上げるように要望しました。4月からはほぼ全社が5%値上げし、コミッションは5%に減少する。運賃が上がるフレームができているということです。

 ただ、旅行会社にとってエコノミークラスの値上げはネガティブポイントかもしれません。円高になった分、ランドコストがかかり、今まではその分をエア代で抑えて欲しいとキャリア側に要望されたこともありました。ただ、そう言う意味ではこちらもぎりぎり。旅行会社も商品の売値を上げてくると思います。

今年はコミッションの削減やBSP清算回数の増加、Same Day VOIDの導入などが予定され、
それらへの対応は旅行会社にとって大きな課題となっています。航空会社はどう捉えていますか

(中島) 航空会社としてはキャッシュフローが大切。過去には燃油費が支払えずに空港で差し押さえられた事例もあります。先に述べたように今年は油の問題、それだけだと思います。

 ただ、変化に対応できなかった中小の旅行会社が資本力のある大手に吸収されると、強いところが強くなって、結局大手に価格のイニシアチブがとられてしまいます。これは健全な業界構造とはいえません

 今後、旅行会社はチケットの代売だけでは厳しく、プラスアルファが必要でしょう。他社より2万円高くても、小さな旅行会社を利用する人もいる。結局その会社はその人にとって利便の良い秘書的な役割もしていて、トラベルフィーをとっているということです。海外では一時期、BTMがはやりましたが、今はマイ・エージェントに戻りつつあるということも聞いています。

企画 : ギャランツアー株式会社