宿泊税導入の動き続々 高山市や下呂市 観光振興に活用 客負担増 事業者と調整 

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田中市長(左)に要望書を手渡す堀会長(高山市で)
田中市長(左)に要望書を手渡す堀会長(高山市で)
家族連れらでにぎわう下呂温泉街(下呂市で)
家族連れらでにぎわう下呂温泉街(下呂市で)

 東海3県の自治体で宿泊税の導入を目指す動きが相次いでいる。新型コロナウイルスの感染症法上の分類が昨年5月に5類に移行し、インバウンド(訪日外国人客)が増加するなど観光需要が高まる中、税収を観光振興に役立てることを狙っている。宿泊客の負担増を懸念する意見もあり、事業者側と調整しながら進めている。(早坂直樹、山崎栄二)

■安定的な財源

 「直接的に観光振興に充てられる財源という意味では宿泊税が一番いいと思う」。高山市の田中明市長は3月25日、観光、旅館・ホテル、飲食業など13団体の代表らから市役所で宿泊税の早期導入を求める要望書を受け取り、こう述べた。

 同市の2019年の観光入り込み客数が473万3000人、外国人宿泊者数が61万2000人とともに過去最多となった。コロナ禍で急減したが、23年はそれぞれ19年比で約86%、約74%まで戻った。観光地「古い町並」などは国内外の観光客でにぎわう。

 要望書では、宿泊税を新たな観光施策の実現に必要な安定財源とし、オーバーツーリズム対策を含めた環境保全など使途を条例に明記することなどを求めた。

 飛騨・高山観光コンベンション協会の堀泰則会長は「高山が持続可能な観光地としてあり続けるための要望だ」と強調。田中市長も「早期に進められるように取り組みたい」と答えた。

■全国各地で導入

 宿泊税は東京都が2002年に全国で初めて導入。大阪府、福岡県のほか、京都市、金沢市、北海道倶知安町などでも導入されている。

 東海3県で最初に導入される見通しなのが、中部国際空港のある愛知県常滑市だ。市議会で3月に宿泊税条例案が可決され、25年1月頃の施行に向けて準備を進めている。

 インバウンドが多い市内の宿泊者数は22年は67万6000人だったが、コロナ禍前の19年は110万人に上った。市は1人1泊で一律200円を課し、年間約2億円の税収を見込む。空港や宿泊施設と市街地を結ぶシャトルバスの運行、観光PRなどの事業に活用することにしている。

■丁寧に説明

 三重県鳥羽市や下呂市でも市長が検討する意向を示している。課税が「値上げ」になることから抵抗感を抱く宿泊事業者もおり、慎重に進める方針だ。

 鳥羽市の中村欣一郎市長は1月、市内の宿泊事業者でつくる市旅館組合連絡協議会から宿泊税導入の検討を求める要望書を受け取り、「前向きに検討したい」と応じた。

 同協議会が旅館やホテルなどにアンケートをしたところ、回答した59施設中31施設が導入に賛成し、反対も10施設あった。課税による宿泊客の減少を懸念する意見があったという。中村市長は早ければ26年度の導入を目指す考えを示した上で、「事業者が不安を抱かないよう検討していきたい」と配慮を見せた。

 下呂市では山内登市長が2月、25年度の導入を目指すと市議会の施政方針で表明した。日本三名泉に数えられる下呂温泉がある市内の年間宿泊者数は100万人規模で、年間2億円程度の税収を見込む。

 下呂温泉旅館協同組合や観光地域づくりに取り組む下呂温泉観光協会の代表者らと山内市長が昨年11月に面談し、世界に通用する持続可能な観光地づくりの財源に必要と判断した。インバウンド誘致のほか、JR下呂駅と周辺の再整備の財源としても期待を寄せる。

 市は1月から市内の宿泊事業者に説明や聞き取りを行い、税収の使い道や課税内容のアンケートも実施。事業者側と合意形成を図った後、早ければ市議会9月定例会に条例案を提出したい考えだ。

 市観光課の今井寛司課長は「地域によって宿泊の目的や客層が異なる。丁寧に説明して理解を得たい」とし、納税者となる宿泊客には「わかりやすい使い道をどう示していけるかが大切だ」と話した。

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