沖縄県、初の観光ブランド戦略 価値は「心と体を解放」
沖縄県は主要産業である観光業の稼ぐ力を高めるためのブランド戦略を初めて策定した。国内外の消費者調査を踏まえ、観光客に提供する沖縄の価値について「心と体がゆったりと解放される」ことを挙げた。2024年度に観光や農林水産といった各産業の事業者でつくる会議体を設け、観光誘客に向けた具体的な戦術の議論に乗り出す。
28日に公表した「おきなわブランド戦略」は22年度から2年間かけてまとめた。日本のほか中国や韓国、香港、台湾、米国の6カ国・地域の延べ1万6000人への調査を基に消費者が求める価値を企業や経済団体などと議論してきた。県は事業費として22〜23年度に計4300万円の予算を計上した。
戦略は「誰に何の価値を提供するのか」を明確にすることを指す。まず、狙うべき観光客のターゲットを「好奇心旺盛で旅行が好きな消費者」と定め、このうち本格的な体験を求めたり同行者と感動を分かち合ったりする旅行者層を「コアターゲット」と指定した。
その上で、沖縄のブランド価値は「心と体がゆったりと解放され、まっさらな自分にエネルギーがみなぎり、新しい出会いにこころ躍る」ことだと明文化した。「沖縄」という地名から想起されるイメージを官民一体で明確に発信することで、旅行の行き先として沖縄を選ぶ観光客を増やす狙いだ。
玉城デニー知事は同日のシンポジウムで「沖縄は人生観を揺さぶるような希少性の高い体験を提供できるポテンシャルがある」と語った。潜在力を生かすため「戦略が県民や事業者に幅広く浸透し、産業間の垣根をこえて連携して実践されることが重要になる」と呼びかけた。
調査の設計や分析、ブランドづくりはマーケティング企業の刀(大阪市)が22年3月に沖縄県と結んだ連携協定に基づき協力した。刀は25年に開業予定の沖縄本島北部のテーマパーク、JUNGLIA(ジャングリア)の事業を主導している。
刀の森崎菜穂美エグゼクティブ・ディレクター・マーケティングは「ブランド価値を認識しながら、農産物など一つ一つのコンテンツをどう魅力的に見せれば消費者にすてきに見えるかを考えることで消費が促進される」と説いた。