長崎県のIR計画は不認定 観光振興戦略見直し必須
国が事業計画を認定しないと決めた長崎県の統合型リゾート施設(IR)は、ハウステンボス(同県佐世保市)の敷地(約32ヘクタール)に、カジノ施設のほか、国際会議場や宿泊施設、ショッピングモールなどを建設する構想だ。県は国の認定を受けて2027年秋ごろに開業し、開業から5年目で区域全体を673万人が訪れると見込んでいた。
県の想定によると、IRの年間売上高は約2716億円に上り、このうちの7割に当たる約2003億円をカジノ部門からの収入として見込んでいた。IR設置運営事業予定者は、欧州を中心にカジノ経営の実績がある企業の日本法人、カジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパン(CAIJ)を21年8月に選定した。
初期投資額の約4383億円は、事業費の40%にあたる約1753億円をCAIJなどが出資。残りの約2630億円は国内外の金融機関から借り入れることとしているが、出資企業や融資をする金融機関などの詳細は、明らかにされていない。
今年4月に日本で初めて認定された大阪府と大阪市のIR整備計画では、初期投資額の約1兆800億円のうち約5300億円について米MGMリゾーツ・インターナショナル、オリックスや関西電力、パナソニックなどの有力企業が出資する。融資団のアレンジャーには三菱UFJ銀行と三井住友銀行が名を連ねている。
一方で長崎県のIR計画は、国による審査が継続となっていた。県は資金調達先の一つとしてクレディ・スイスの名前を明かしたが、3月に同社の経営不安が表面化したことから、資金調達を不安視する声もあったという。
県の主要産業である観光産業では、福岡など西日本の主要観光地に比べてインバウンド(訪日外国人)の回復の動きが鈍い。県によると、仮に長崎IRが認定されていれば27年秋ごろの施設開業を目指していた。観光振興の起爆剤としてIRへの期待感が高かっただけに、長崎県や経済界には戦略の見直しが求められる。
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