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コロナ禍で高校生の修学旅行の行き先が大きく変化し、長崎、福岡、熊本といった九州の人気が急上昇している。高い人気を誇る東京や沖縄などの感染者が多かったことや、海外も渡航制限が続いたことから代替地として選ばれ、長崎は2年連続で全国トップとなった。ただ、行動制限の緩和を機に行き先を再び見直す学校も考えられるため、関係者は、この勢いを途切れさせまいと奮闘している。(山田伸彦)
平和・歴史の学習が充実
7月上旬の午後。長崎市の観光名所・新地中華街は、角煮まんじゅうの食べ歩きや記念撮影を楽しむ修学旅行生らでにぎわっていた。例年はシーズンの谷間だが、その様子は感じられない。
日本修学旅行協会(東京)がまとめた最新の高校修学旅行の都道府県別行き先ランキング(2021年度)で、長崎は1位に輝いた。20年度に続く快挙。コロナ禍前の19年度は8位だったため、大きくランクアップした。
海外や東京などの都市部、医療現場の
21年度のランキングでは、福岡4位、熊本8位と、トップ10に九州3県が入った。19年度は福岡10位、熊本18位で、それぞれ大きく上昇した。
九州観光機構によると、九州は平和や歴史・文化に関する学習プログラムが充実していることから人気が高く、近年は震災遺構を活用した防災の取り組みや、SDGs(持続可能な開発目標)活動にも注目が集まっている。熊本県では、熊本地震の断層や被災施設などの保存・展示が進み、ガイドが修学旅行生らに地震の怖さや命の大切さを伝えている。SDGs活動の「トップランナー」とPRする北九州市では、事前学習用の動画を公開したり、旅行プランを提案したりして、受け入れの充実を図っている。
一方、長年トップだった沖縄は5位。感染の急拡大に加え、感染した場合に地元に戻る方法が限られるなど離島特有の問題もあり、順位を下げたとみられる。
魅力売り込む
長崎市では、今年も好調に推移しているものの、関係者は楽観していない。修学旅行の行き先は2、3年前から検討を始めるのが一般的といい、市宿泊施設協議会事務局長の浜里泰男さん(60)は「一過性で終わるのか、定着するのか。この1、2年が鍵を握る」と強調。協議会として関西や関東などの旅行代理店を回って、長崎の魅力や宿泊施設の受け入れ態勢をアピールするなど、働きかけを強めている。
長崎国際観光コンベンション協会も公式サイトを刷新し、長崎原爆の被爆の実相を伝える「平和ガイド」などについて複数のサイトに分かれていた情報を集約。今月の23~25日と、来年1月には旅行会社の担当者を招いて長崎の魅力に関する研修会を開くなど、攻めの姿勢で売り込みを図る。
受け入れに課題も
コロナ禍での離職など、観光業界の人手不足は全国的に深刻化しており、飲食店や物販店の中には、大型の団体旅行の極端な増加にメリットを感じず、受け入れをためらう事業者もいる。
協会では、こうした事業者を対象にセミナーを開催する予定で、班別行動が主流といった最新事情を紹介し、小規模店にもビジネスチャンスがあることを伝え、受け入れ拡大に向けて機運を醸成したい考えだ。
同協会事業部長の古賀典明さん(46)は、「手を打たないと、あっという間に元に戻ってしまう。好機を無駄にしないよう、関係者と連携して長崎がいかに修学旅行に適しているかを発信し、リピーター獲得や掘り起こしにつなげたい」と話している。