JATA、「両利き」めざし経営フォーラム開催-コロナ風評払拭へ

分科会「デジタルネイティブ時代の新たな旅行会社のカタチ」の様子  日本旅行業協会(JATA)は2月21日、六本木アカデミーヒルズで第28回の「JATA経営フォーラム」を開催した。会員企業などの経営陣や有識者などを招き、旅行業界が抱える課題について議論するために毎年開催しているもので、今回のテーマは「既存事業深化とイノベーション 『両利きの経営』を目指して」。JATAによれば来場者数は約300名だった。

田川氏  「両利きの経営」については米国の大学教授2氏による2016年の共著「両利きの経営 『二兎を追う』戦略が未来を切り拓く」の邦訳版が昨年に発売されており、JATA会長の田川博己氏も6月の定時総会の挨拶で言及(関連記事)。この日の挨拶で田川氏は「今は二兎も三兎も追う時代」と述べた上で、中核事業を維持しながら新たなイノベーションを起こす「両利きの経営」の重要性を参加者に訴えた。

冨山氏  その後は同書の邦訳版に解説を寄稿した経営共創基盤代表取締役CEOの冨山和彦氏が、「両利きの経営に求められる経営リーダーシップ」と題した基調講演を務めた。冨山氏は、ここ30年間でグローバリゼーションとデジタル革命による「破壊的イノベーションの波」が産業構造を大きく変えたものの、そのなかで既存事業を深化させる「改良型イノベーション」と新事業を探索する「破壊的イノベーション」の両方に取り組み、成長を遂げた企業も多数あることを紹介。日本の旅行業においてもそのような「両利きの経営」が可能と主張して、参加した経営陣に奮起を促した。

 恒例の企業役員などによる分科会は海外旅行やテレワークなど、今年も4つのテーマで開催。このうち国内旅行に関する「デジタルネイティブ時代の新たな旅行会社のカタチ」では、日本旅行取締役常務執行役員個人旅行統括本部長の大槻厚氏など5氏が登壇し、今年度に新設した「国内旅行マーケットにおける新たな役割委員会」で検討したビジネスモデルの未来像について説明した。同会はこれまでに外部の専門家など4人を講師として招き、7回の勉強会を実施したという。

 5氏は今後の旅行会社の主要顧客が、1980年から2000年頃に生まれたデジタルネイティブのミレニアム世代へと移行することを前提に、購買行動や意思決定要因を理解することの重要性を説明。OTA、宿泊施設、DMOなどの最新動向を踏まえた上で、旅行会社の店舗については旅行販売の場から「ブランドコミュニケーションの場」へ、スタッフについては販売員から「トラベルアドバイザー」へ、機能についてはコーディネーターから他業種の力を統合して新しい価値を生む「インテグレーター」へと変化することを提案した。

フォーラムの最後には、国文学者で新元号「令和」の考案者と見られる中西進氏が「令和に憶う旅」と題した特別講演を実施した  なお、田川氏は冒頭の挨拶で、世界的な感染拡大が進む新型コロナウイルスについても言及。このほどJATA公式サイトに関連情報をまとめたページを設けたことを報告するとともに、観光庁とも連携して風評被害の防止と収束後のリカバリーに備える考えを示した。来賓として挨拶した観光庁国際観光部長の高科淳氏(高ははしご高)も、正確な情報発信により風評被害に努める方針を示した。

※各分科会の詳細は後日掲載予定