【仕事を変える】HISモバイル社長 猪腰英知氏-旅行から通信事業へ果敢に挑戦

新領域でこそ感じるおもしろさ
後進には「自ら手を挙げて飛び込め」

HISモバイル代表取締役社長の猪腰英知氏

 業界環境の変化とともに、大手を中心に事業多角化の動きが顕在化し、旅行事業から畑違いの部門へ異動となる可能性も十分にある現在。また、昨今の訪日ブームもあって異業種に活躍の場を求める業界人も増えているはず。職を変えることとなった人々はどのようなことを思い、旅行業をどう見るのか。また、そもそも旅行会社での経験はどれほどの社会的価値を持つのか。新企画「仕事を変える」では、そうした場面にスポットライトを当て、旅行業界における働き方の、そして旅行業界自体の未来を探ることをめざす。

 第1弾に登場するのは、エイチ・アイ・エス(HIS)グループのHISモバイルで代表取締役社長を務める猪腰英知氏。日本各地で営業や仕入れ、企画などに携わった後、東京でハワイ・オセアニア事業部グループの責任者や航空仕入れを経験し、昨年から「変なSIM」の販売に全力を傾ける猪腰氏に話を聞いた。

-まずこれまでのご経歴をお聞かせください

猪腰英知氏(以下、敬称略) 1995年にHISへ新卒で入社し店頭での接客業務を経験した後、営業所所長として福島県に配属となった。当時は人員が十分ではなく、一人で航空仕入れ、企画、Web管理、広告全般をやらせてもらった。幅広く経験できたのはよかったと思う。

 その後、仙台に移り、コールセンターの立ち上げや航空券の値付けの責任者を担当。広島に異動し、中四国地区の営業統括としてゼロから営業部の立ち上げに携わった。その後、北海道に異動してアウトバウンドの責任者となった。

 東京に戻った後は、ハワイ・オセアニア事業グループの責任者を3年ほど務め、ハワイ旅行専門店の立ち上げでは物販の勉強もさせてもらった。その後は東京の航空仕入れ。ここまで様々な幅広い事業に携わるのはHISでも珍しいかもしれない。

-HISモバイル立ち上げの背景はどのようなものだったのでしょうか

猪腰 日本通信から78ヶ国で利用可能なSIMカード技術を提案された。MVNO事業は価格競争が厳しく、販売管理費もかかるため利益が出にくい構造になっているが、裏側の技術は日本通信にバックアップしていただき、販売やサービス面はHISのリソースを使えば販促費や開発費を抑えることが可能になり、ビジネスとして成り立つのではないかと考えた。そうした見込みのうえで日本通信と合弁でHISモバイルを設立した。

 この案件を聞いた時は、ハワイ旅行専門店での物販の経験もあって「バックヤードがしっかりしているのであれば、やってやれないことはないだろう」と思った。立ち上げは2018年2月。それまでは航空仕入れの業務を兼務しながら準備を進めていた。