ロンドンで再びテロ、ツアーは継続、今後に不安の声も

 英国ロンドン市内のロンドン橋の歩道で現地時間の6月3日夜、イスラム教過激派のテロリストが運転していたと見られる車両が通行人を轢いた後、搭乗していた複数名の犯人が付近のマーケットにいた人々を刃物で刺す事件が発生した。現地の報道などによれば、日本時間5日午後の時点でこれまでに7名が死亡し、50名以上が負傷。外務省は新たなスポット情報を発出し、旅行者に注意を呼びかけている。

 英国では3月にもロンドンのウェストミンスター橋の歩道を車両が暴走して死傷者を出す事件が発生しており、5月にはマンチェスターのコンサート会場で爆発事件が起き、多数の死者を出したところ。これらの事件について、現時点で日本人の死傷者は出ておらず、旅行会社による英国へのツアーに大きな影響はないが、業界関係者からは「英国でもテロが続くと欧州旅行に与える影響は非常に大きい」と不安視する声も挙がっている。旅行各社などの反応をまとめた。

 3日の事件について大手旅行各社は、いずれも早期に旅行者の安否を確認。ジェイティービー(JTB)、エイチ・アイ・エス(HIS)、KNT-CTホールディングス(KNT-CT)、阪急交通社、日本旅行は本誌の取材に対し、英国を訪れていたツアー客に被害はなかったことを説明するとともに、現時点では各社ともに目立ったキャンセルはなく、今後も外務省や現地などから情報を収集しつつ、ツアーの催行を続ける考えを示した。

 このうちJTBは、計100名超のツアー客がロンドンにいたが、無事を確認後はツアーを続行。79名がロンドン入りしていた日本旅行は「英国はイタリアなど他の欧州諸国と比べてコースの設定数が少ないため、大きな影響は出ていない。今後については欧州全体の動向を注視していきたい」とコメントした。KNT-CTは5日昼の時点でツアー客の数を集計中。HISと阪急は非公表とした。いずれも今後のツアーの催行への影響はないとしている。

 ランドオペレーターのミキ・ツーリストは、現地ガイドから届いた報告を紹介する形で「事件後の市内では警官などの姿を見かけるものの、渋滞などに巻き込まれずスムーズに観光ができている」と説明。5日昼の時点でヒースロー空港の保安検査場や出入国管理は滞っておらず、地下鉄なども通常通り運行を続けているという。ロンドン橋については現在も封鎖されているが、それに伴う渋滞などは発生していないとのこと。

 なお、今回の事件に関する旅行会社などから同社への問い合わせについては「複数あるものの、15年11月のパリ同時多発テロ事件の時のような過剰反応はない」と語った。これまでに2件の団体旅行が催行中止または延期を決定したが、参加者数は合計で30名程度という。

 訪英日本人旅行者数はここ10年ほど減少を続けているところ。同社は「昨年あたりからツアーの催行が増えてきた印象があり、英国旅行の復活の兆しを感じていただけに、立て続けにテロ事件が発生していることは残念」と語るとともに、「テロが続けばボディブローのように効いてくるかもしれない」と懸念を示した。今後については「現地の情報を収集して旅行会社に伝えることで、旅行者への正確な情報提供に努めたい」と述べた。

 なお、駐日英国大使館や英国政府観光庁は、5日夕方の時点で声明などは発表していない。