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英国がEU離脱へ、関係者からさまざまな不安-決定直後の反応

  • 2016年6月25日

ロンドン中心部  英国で実施された欧州連合(EU)からの離脱・残留を問う国民投票で、日本時間の6月24日午後、離脱派の勝利が確認された。日本経済への悪影響や英国内の不安定化、他のEU加盟国の離脱による「EU崩壊」の可能性まで、さまざまなシナリオが予想されるなか、日本の旅行業界にはどのような影響が考えられるのか。離脱派の勝利決定直後の、関係者のコメントを集めた。

 この日は日本旅行業協会(JATA)が「欧州旅行復活に向けた緊急フォーラム」を開催し、開催中にEU離脱派の勝利が決定。JATAのチーム・ヨーロッパ観光促進協議会委員長を務めるグローバルユースビューロー会長の古木康太郎氏は会場で、「円高になる一方、株価の下落で可処分所得が減り、旅行需要に影響が出る可能性がある」と懸念を示した。その上で「欧州そのものがなくなるわけではない」とも語り、「引き続き、旅行業界全体で送客に取り組みたい」と意欲を見せた。

 本誌の取材に応えた英国湖水地方観光局在日代表の竹中正道氏は「為替の変動が、旅行素材の仕入れや下期商品の値付けに影響を与えるだろう」とコメント。また、今回の投票で英国国民が離脱派と残留派に分かれたことから「争いが発生すれば、英国の治安に影響を与えるのでは」と懸念を示した。

 フォーラムに参加した旅行会社や観光局などからは、「当面は大きな影響はない」「影響の有無は今後の動き次第」などの声が聞かれた一方、「EU脱退が英国に進出している日本企業の事業に影響し、業務渡航などが減少するのでは」「他のEU加盟国の脱退を促すきっかけになるかもしれない」など、今後を危ぶむ意見も挙がった。また、ヒースロー空港の入国審査場のレーンは現在「EU域内」と「その他」に分けられているが、離脱後の変更により混雑が発生する可能性を不安視する声もあった。

 ジェイティービー(JTB)代表取締役社長の高橋広行氏は、サーバーへの不正アクセス事案に関する記者会見の場で英国のEU離脱に言及し、「今は直接的な影響は考えにくいが、EU内の各国の動揺の広がりが気にかかる」とコメント。ヨーロッパの多くの国の国境を、検査なしで越えることを許可するシェンゲン協定に影響が出れば「お客様の利便性に影響を与える」と述べた。

 そのほか、ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)と英国政府観光庁は、本誌の取材に対し「ノーコメント」とのみ回答した。