JATA、「中国復活緊急フォーラム」開催、17年に350万人へ

  • 2016年3月22日

フォーラムはJATAの会議室で開催。セミナー前にはワークショップも開催した  日本旅行業協会(JATA)は3月22日、都内で「中国旅行復活緊急フォーラム」を開催した。モデレーターを務めたJATA副会長の菊間潤吾氏は、2016年のJATAのテーマが「海外旅行の復活」であることを説明した上で、その実現のためには「中国の復活が一番」と強調。17年が日中国交正常化45周年であることから「17年までに(2012年の)350万人まで戻せるように」中国市場に注力していく姿勢を示した。

JATA副会長の菊間氏。JATA海外旅行委員会委員長も務める  JATAによれば、中国への日本人渡航者数は12年以降、尖閣諸島問題などの影響で減少。12年には351万8200人にまで増加したが、15年は12年比で29.0%減の249万7700人となり、3年間で約100万人減少した。旅行業態別の割合では、11年はパッケージツアーの利用者が全体の34%、団体が5%、業務渡航などを含む個人が59%だったところ、14年はパッケージツアーが7%、団体が4%、個人が85%と、パッケージツアーの割合が大幅に減少。菊間氏は「100万人を回復するためには、パッケージツアーの復活が重要」であり、そのためには3年前と同様の旅行商品を販売するのではなく、中国の変化を踏まえた新しい切り口での商品造成が重要になると強調した。

中国国家観光局の羅氏  中国国家観光局駐日本代表処首席代表の羅玉泉氏は、旅行会社が商品数を減らした12年からの3年間で、中国では高速鉄道や高速道路、ホテルなどが整備され、旅行環境が大きく変化した旨を説明。「今回のセミナーで中国市場の現状を知ってもらいたい」と強調した。また、中国の観光地の格付けで最上級の「5A」ランクの観光地が、14年現在で186ヶ所に上っていることをアピール。山東省棗荘市の台児荘古城などを紹介し、商品化を提案した。

中青旅日本の江川氏  セミナーでは、中青旅日本営業部部長の江川光太郎氏が、中国の最新情報を提供。中国では20年の完成を目途に高速鉄道網の整備を進めており、16年には12路線を新たに着工することなどを説明した。また、ここ数年で完成した高速鉄道のなかからツアーで利用しやすい路線として、14年に運行を開始したチベット高原初の高速鉄道の「蘭新高鉄」を紹介し、シルクロードツアーにおいて活用することを提案。「予約の取りにくい航空路線を避け、高速鉄道を組み合わせる商品造成が基本になってきた」と語った。そのほかには西安と成都を結ぶ「西成旅客専用線」により、従来は12時間かかった同区間を3時間で移動できるようになったことなどを紹介した。

 高速道路については、桂林を中心とした南部の山岳地帯の高速道路網の発達について紹介し、活用をすすめた。ホテルについては国内の5ツ星ホテルが869軒に上ることを説明し、FIT向けには各地のブティックホテルの利用を提案。菊間氏も、中国各地にある外資系リゾートホテルを利用したパッケージツア―の造成を提案した。

 江川氏はモデルルートとして、中国国家観光局がシルクロードをアピールしていることを踏まえ「新シルクロード・絶景紀行 西寧・門源・張掖・嘉峪関・敦煌8日間」や、団体向けコースとして「国際都市上海と水郷古鎮リゾートに宿泊する4日間」などを説明。水郷古鎮については、一般消費者が予約しにくいリゾートホテルをコースに組み込んでおり、旅行会社ならではの強みが出せる点を強調した。

 このほか、セミナーではキャラバントラベル代表取締役の王昕氏が、中国への日本人旅行者はシニア層がメインとなっている点を指摘し、若者層の取り込みの必要性を強調した。東武トップツアーズ海外旅行部長の徳野浩司氏は、近年の同社の団体旅行の傾向について語り、14年は11年比60%減となったものの、15年は微増に転じたことを報告。特に官庁や地方自治体による公務団体が、14年の42%減から15年には12%増へと回復した旨を説明し、「公務団体はグループの切り口としてポイントになるのでは」と語った。

 チャイナエンタープライズ代表取締役社長の常永波氏は、15年の日中間の航空座席数が12年比で約130万席増加しており、就航都市も41都市まで増加したことを説明。日本発の座席については、航空会社から「訪日とのアンバランスを解消したいという声も出ている」ことから、今後は「席の確保の交渉がしやすくなる」との考えを示した。