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Airbnb、民泊の早期法整備を要望-経済効果に自信

Airbnb Japan代表取締役の田邉泰之氏  Airbnbは11月26日、プレス向けに「日本の経済波及効果に関する調査結果」の発表会を開催した。Airbnb Japan代表取締役の田邉泰之氏は、本誌の単独インタビューに対し、民泊に関する法整備を政府や宿泊業者などの関係各者と協力して進めていきたい旨を説明。「我々のゴールとしては、弁護士を必要とせずに、誰でも『こうした場合に部屋を貸すことができる』と理解できる法整備をめざしたい」と語った。

 また、Airbnbアジア太平洋公共政策ディレクターのマイク・オーギール氏は、特区制度を活用した民泊の動きについて「とてもエキサイティングな取り組みだが、我々が最も優先していることは、国が(全国を対象に)包括的に制度改革をおこなうこと」と強調。引き続き、政府に早期の法整備を求める働きかけをおこなう考えを示した。

 Airbnbは190ヶ国以上、3万4000都市以上で200万件以上の物件を取り扱っているところ。同社によると、今年の夏には全世界で1700万人が宿泊し、8月8日のピークには1晩で約100万件の宿泊を記録した。現在の日本の物件数は約2万1000件で、Airbnbの物件に宿泊する訪日外国人は前年から529%伸びたという。また、海外のAirbnbの物件を利用する日本人旅行者は285%増加し、急激に市場を拡大している。田邊氏は「本社でも日本を重要市場と捉えている」と語った。

Airbnbアジア太平洋公共政策ディレクターのマイク・オーギール氏  オーギール氏はAirbnbの施設を利用する宿泊者(ゲスト)は「地元の人々がどういう生活をしているかに興味を持っている」と説明。同社の実施したアンケートによれば、Airbnbを利用した69%のゲストがリピーターで、79%がAirbnbの利用により「日本を再訪する可能性が高まった」と回答したという。また、Airbnbで宿泊料を抑えることで、ショッピングや飲食など現地での消費が増加していると説明し、観光業に同社が貢献していることを強調した。

  ただし、日本市場においては、ゲストや宿泊施設提供者(ホスト)の安全性、近隣住民への影響、旅館業法に基づかない民泊に対するホテル・旅館業界側からの反発など、さまざまな課題が挙がっている。田邉氏は安全性について「Airbnbは安心と衛生面に留意してサービスを作ってきた」点を強調。ユーザー登録の際に電話番号やメールアドレス、写真付き身分証明書などの情報を収集し、本人確認を強化して信頼性を高めている旨を強調した。また、ゲストとホストが互いにレビューしあうシステムの構築や、コミュニケーションを取るためのチャット機能、Facebookとの連携などもおこなっていると説明した。

 同社ではトラブル対策として、利用者間の課題を解決するための「問題解決センター」や、ホストの提供物件に損傷があった場合、最大1億円まで補償する「ホスト保証」を提供しているところ。11月からは対人、対物事故の損害賠償に最大100万ドルを補償する「ホスト補償保険」も開始した。田邊氏は、15年夏に1700万人がAirbnbを利用した際に、緊急対応した件数は300件で、発生率は約0.002%であったことを強調し、トラブル発生率の低さをアピールした。

 既存の旅館やホテルなどの宿泊施設については「競合ではなくて協業」である点を強調。「我々の説明不足の部分もあるが、各社と話すと思ってもいなかった協働のアイデアが生まれてくる」と語り、地方の既存の宿泊施設とも協業について話し合いを進めていると語った。協業の内容については明かさなかったが「来年早々に一緒に何かできるのでは」という。

 このほか、発表会では、早稲田大学ビジネススクールディレクターの根来龍之教授が、14年7月から15年6月までの1年間について、Airbnbを利用した海外からのゲストと、日本のホストのデータをもとに実施した調査の結果について説明。日本国内で年間2219億9000万円の経済効果、2万1791人の雇用を産んだとの試算を示した。なお、同期間に日本で宿泊を提供したホスト数は5030人、海外からのゲスト数は52万5000人だった。