韓国専門の三進トラベル、北朝鮮手配会社を設立-市場開拓へ

  • 2015年8月31日

北朝鮮南部、新坪サービスエリアの店員(ジェイエス・エンタープライズ提供)  韓国旅行専門旅行会社の三進トラベルサービスはこのほど、東京の同社本社内に北朝鮮専門の地上手配会社としてジェイエス・エンタープライズを設立し、「JSツアーズ」の名称で8月1日から業務を開始した。昨年夏に日本政府が北朝鮮に対する経済制裁を一部解除し、人的交流を自由化したことなどを受けて設立したもの。北朝鮮国営の朝鮮国際旅行社と提携して現地の地上手配などの業務をおこない、在日朝鮮・韓国人ではない日本国籍保有者をターゲットに北朝鮮観光を促進する。

 北朝鮮の地上手配のほかには、同国の国営航空会社である高麗航空(JS)の予約発券や、中国・遼寧省の丹東と平壌を結ぶ国際列車の予約、中国や韓国など隣国の地上手配をおこなう。代表取締役社長には、三進トラベルサービスの社長も務める小島健康氏が就任。そのほかに専任者2名と三進トラベルサービスとの兼任者1名をスタッフとして置く。

 小島氏によれば、三進トラベルサービスを設立した1989年当時から韓国と北朝鮮の両方を取り扱う意欲はあったものの、「伝手がなく、難しいと思っていた」ことから、近年まで本格的な取り扱いには至らなかったという。しかし2012年10月以降、小規模ながら北朝鮮ツアーの販売を開始したことや、昨夏の人的交流自由化などを機に、本格的な取り扱いに向けた準備を開始。北朝鮮と韓国の2国間関係などにも配慮し、新会社のジェイエス・エンタープライズを設立することに決めた。

北朝鮮中部、咸興市の子供たち(同社提供)  ジェイエス・エンタープライズによれば、北朝鮮を訪問する外国人旅行者数は中国や欧米諸国を中心に、推定で年間約4万人に上る。同社では「日本ではネガティブな報道が多く危険なイメージが先行しているが、世界遺産や美しい街並み、豊かな自然など観光資源は豊富」と魅力をアピール。首都の平壌のほか、韓国との国境に位置し南北共同の工業団地がある開城、日本に入港していた万景峰号の母港である元山など、各地の地上手配が可能としている。

 日本国籍を有する旅行者数の規模は「年間で100人から200人程度」で、同社では当面はFIT向けの手配旅行や受注型企画旅行を手がける方針。現時点で、今年は秋までに30人程度を送客する見通しで、小島氏は「年末までに50名を目標に送客したい」と意欲を示した。なお、朝鮮総連関係者の渡航や朝鮮学校の修学旅行、親族の訪問などによる在日朝鮮・韓国人の北朝鮮訪問は、年間で約2000人に上るという。

 今後については、日本国籍保有者も安心して観光旅行ができることをアピールし、市場の開拓をはかる考え。韓国語学習者や、朝鮮半島の歴史・文化のファンなどを取り込み、小規模ながら成長は見込めるとしており、3年以内の黒字化をめざす。また、将来的にはオフィスを三進トラベルサービスの外に設け、日本海外ツアーオペレーター協会(OTOA)や、日本旅行業協会(JATA)への加盟も視野に入れるという。

 10月には創設記念として、業界関係者向けに北京発着で平壌を訪れる5日間のモニターツアーを実施。28日には募集を開始しており、既に参加希望を含む問い合わせを複数受け付けているという。一般向けにも「オープニングツアー」として「成田・関西発着 平壌・開城・金剛山 7日間」などを設定。三進トラベルサービスなどを通じて発売するという。