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角屋旅館と佐野温泉が破産手続、宮城の住久は民事再生法申請

  • 2015年7月7日

 東京商工リサーチ(TSR)によると、新潟県の「角屋旅館」と福井県で温泉旅館を経営する「佐野温泉」が6月30日、事業を停止し破産手続を開始した。また、宮城県で温泉旅館を経営する「住久」が7月3日に仙台地裁へ民事再生法の適用を申請し、保全命令を受けた。

 角屋旅館は破産手続を佐藤法律事務所の佐藤芳嗣氏に一任。負債総額は約1億2700万円となった。角屋旅館は1868年に創業し、上田市の鹿教湯温泉で「かどや旅館」として運営。豊富な湯量の掛け流し温泉を特徴に、建物改装後は「ニューかどや」として5階建て、22室の旅館を経営していた。しかし、近年は観光客が減少したことに加え、周辺旅館やホテルとの競合で業績が低迷。15年3月期の売上高は約2700万円まで減少した。

 佐野温泉は、破産手続を海道法律事務所の海道宏実氏に一任。負債総額は約2億1000万円だった。同社は1977年に創業し、福井市北西部の山間部で温泉旅館「天然温泉 佐野温泉」を経営。客室は全34室で、飲泉が可能な温泉に加え、アロエ風呂や砂利風呂などのアイデア風呂を売りに、ピーク時の96年10月期には売上高約5億7000万円を計上していた。

 しかし、その後はスーパー温泉などとの競合や個人消費の冷え込みにより客足が鈍化。2013年8月には露天風呂付きの客室3室を設けるなどリニューアルをおこなったが客足は回復せず、14年10月期の売上高は約1億5000万円まで伸び悩んだ。業績の低迷に加え、設備投資にともなう借入金の増加で資金繰りが逼迫。最近になっても業績が回復せず、事業継続を断念した。

 住久の申請代理人はひろむ法律事務所の阿部弘樹氏とほか1名で、監督委員には弁護士法人杜協同阿部・佐藤法律事務所の佐藤裕一氏が選任された。負債総額は債権者63名に対して約6億4000万円。同社は1991年5月、中山平山荘「琢琇」の屋号で温泉旅館の営業を開始。鳴子温泉郷の中山平地区で熱帯植物園に隣接する純和風の旅館として業容を拡大し、2006年4月には別館として「琢琇のんびり館」をオープンした。ピーク時の07年10月期には売上高約3億5000万円を計上していた。

 しかし、同業者との競合激化や市況低迷による集客不足などで減収。東日本大震災で一時休業を余儀なくされ、収益が悪化するなか14年1月に創業者であり前社長の佐々木久子氏が死去。現社長が就任し回復をはかったものの、14年5月期の売上高は2億円を下回った。資金状況が厳しさを増し、自力再建が困難となり今回の措置に至ったという。