エジプトの渡航情報引き上げ、大手各社がツアー中止

  • 2013年7月3日

 外務省は7月3日、エジプトの渡航情報について、シナイ半島(スエズ湾、アカバ湾に面した沿岸地域を除く)以外のエジプト全域を「十分注意してください」から「渡航の是非を検討してください」に引き上げた。エジプトでは6月22日頃から、反大統領派が大統領の退任を求めてデモや集会を実施しており、6月26日以降、全国各地で大統領反対派と支持派が衝突。外国人を含む多数の死傷者が発生しており、6月30日だけで16人が死亡、781人が負傷した。

 7月1日には国軍が、48時間以内に大統領側が国民の要求に応えない場合は今後のロードマップとその履行のための手続きを発表すると宣言。大統領側は軍の声明に否定的な姿勢を表明しており、大統領と軍で食い違いが発生している。

 外務省では、デモが全国的に広がって複数の死者が出ており、今後の規模の拡大や衝突、混乱の継続の可能性が不透明であること、政治的解決の行方が見えないことなどから「引き続きカイロを含む全国各地で治安の悪化を含め、社会的混乱が拡大、継続することが懸念されている」とし、引き上げを決定。渡航の是非を慎重に検討し、不要不急の渡航は避けるように呼びかけるとともに、やむを得ず渡航する場合は最新の情報の入手、連絡手段の随時確保、適切な安全対策の実施を訴えている。

 外務省の渡航情報引き上げを受け、大手旅行会社各社はパッケージツアーの催行中止を決定。旅行者からの取消料は収受しない。ジェイティービー(JTB)はエジプトを含むツアーについて、7月31日まで催行を中止するとしており、約150名に影響が出る見込み。8月以降の対応は7月下旬に決定する予定。なお、既に出発済みのツアーは、早急にエジプトを離れるよう調整中とした。

 近畿日本ツーリスト個人旅行(KNT個人)、クラブツーリズムも7月31日まで催行を中止。8月については7月15日以降に決定していく。KNT個人では、影響人数は1ケタ台にとどまっているが、クラブツーリズムでは「それなりの人数に影響が出ている」という。両社ともエジプト単体のツアーは中止するが、エジプトを含む周遊ツアーについてはエジプトに訪問せず、他国での延泊やツアー期間の短縮などの調整をした上で催行する予定。エジプトに立ち寄らないことを理由にキャンセルする場合は取消料を収受しない。また、クラブツーリズムはカイロ空港経由でエジプト以外の国を訪問するツアーについては催行する方針だ。

 このほか、日本旅行も7月31日までエジプトを含むツアーの催行を中止。もともと取り扱いの規模があまり大きくないこともありキャンセルの影響は少ないといい、今週中に出発する旅行者もいないとした。

 一方、エイチ・アイ・エス(HIS)は7月15日までエジプトを含むツアーの催行を中止。添乗員付きの周遊型ツアー2本が対象となった。また、阪急交通社も7月17日まで中止するとしており、影響は少なからず出ているという。ジャルパックは、対象ツアーの出発日が9月までないことから催行は中止せず、今後の状況をみながら判断していく考え。ANAセールスはエジプトを含むツアーを上期は造成しておらず、下期については一部造成予定だったことから、今後検討していきたいという。

 なお、エジプトへのアクセスはエジプト航空(MS)が成田から週2便で直行便を運航しているところ。MSによると、旅行会社各社のツアーキャンセルの影響はあるものの、もともと上期はエジプトのモノツアーが3割、カイロ乗継の以遠需要が7割となっており、トルコ、イタリアなど以遠への需要が高い。今後は以遠の需要の取り込みを引き続き実施していく考えで、現段階では減便は考えていないとした。