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観光立国10年の課題-産業全体の問題点と課題を議論

  • 2013年2月19日

 観光庁は1月29日、「観光立国推進ラウンドテーブル」を開催した。観光産業の飛躍を目的に経済界、観光界の経営トップが議論する場として昨年から開始されたものだが、「観光立国宣言」から10年の節目である今年は、今までの観光政策が外客誘致やプロモーションに力点を置かれていたとの反省から、登壇者を旅行業、宿泊業などの観光産業や観光協会、学識経験者はもちろん、物販やアウトドア事業などの観光関連業の代表にも拡大。それぞれが抱く観光立国の課題に対し、モデレーターの矢ケ崎紀子氏が論点を「事業者の収益力向上」「国際競争力の構築」「人材育成」の3つに絞り、今後の観光産業の方向性、強化策を議論した。

議論の始めに発表された各参加者の観光産業に対する問題意識は、産業全体で共有することが大切であることから、参加者紹介とともに別ページに掲載する。参加者一覧とそれぞれの問題意識はこちら


収益力と生産性向上へ
評価されることを恐れない「格付け」導入

 議論は3つの論点について、それぞれ意見を求める形で進められたが、議論では「“格付け”的な評価制度の導入」「適正価格」「ルール、法制度の整備」「オールジャパン」「人材育成」がキーワードにあがった。

 評価制度と価格については「事業者の収益力向上」に関する議論の冒頭で、鶴雅グループ代表の大西雅之氏が宿泊業の抱える問題として、「格付けのような評価制度の導入など、クオリティと価格の整合性や業態区分を議論しなおして整理し、海外に発信していくことが必要ではないか。全員が5ツ星を目指すことにならないような議論を起こしてほしい」と提起した。

 これに対し観光庁長官の井出憲文氏は、昨年発足した観光産業政策検討会で評価制度の検討をしていることを説明。「評価されることに自信の持てる経営・サービスにする必要がある。事業者の姿勢が分かるような仕組みを考えていく」と語った。

 議論では「すでにネットのクチコミなど社会では評価が始まっているので、躊躇する必要はない」(森観光トラスト代表取締役社長の伊達美和子氏)との指摘もあった。伊達氏は、(導入する際の)方向性として「利益体質化が遅れている業界なので、その体質を変えることを目的にすべき」と提案した。

 一方、早稲田大学商学部長でマーケティング戦略を専門とする恩蔵直人氏は、評価測定の仕方を提案。朝日新聞が実施した企業イメージランキングで「一流」のイメージの1位は「トヨタ」だが、「身近」なイメージの1位は「キューピー」だったことを上げ、「算出の軸はいろいろあり、差別化の視点になる」と語った。

 日本旅行業協会(JATA)会長の菊間潤吾氏は「施設の質より地場の良さを残す宿を好む人もいる。消費者の価値が多様化しているのはありがたいこと」と好機にあることを指摘。「価値創造をしやすい時代。消費者の多様化に自社の商品をあてはめ、磨いていく。そこを追求することで、経営を強くすることを考えなくてはいけない」との考えを示した。


※訂正案内(2013年2月19日 18時30分)
山形の滝の湯ホテル専務取締役、山口敦史氏のお名前を誤って表記しておりました。
訂正し、お詫び申しあげます。(編集部)