LCCの発展、路線網や安全性など4つの課題-航空政策研究会シンポジウム

  • 2013年2月5日

 2012年は「LCC元年」と言われ、日系LCC3社の運航開始や外国LCCの新規就航などLCCの動きが活発化した。LCCに新規需要の創出や地域への貢献に期待がかかる一方、路線の集中や定時運航率、安全性などの課題もあがっている。こうしたなか、さきごろ航空政策研究会が開催したシンポジウム「LCCへの期待と展望」では、LCC、行政、利用者それぞれの立場の登壇者がパネルディスカッションを実施。LCCの抱える課題や今後の展望について語った。


・コーディネーター
航空政策研究会理事・事務局長 一橋大学大学院教授 山内弘隆氏

・パネリスト
エアアジア・ジャパン(JW)代表取締役社長(当時※) 岩片和行氏
(※岩片氏は2012年12月17日付で会長に就任)
ジェットスター・ジャパン(GK)代表取締役社長 鈴木みゆき氏
JTBパブリッシング『ノジュール』編集長 竹地里加子氏
国土交通省航空局長 田村明比古氏


LCC2社の路線戦略、路線集中に懸念も

JW代表取締役社長の岩片和行氏
(※岩片氏は2012年12月17日付で会長に就任)
 シンポジウムではまず、参加したLCC2社が今後の戦略について説明。JWの岩片氏は国内線のコストの高さから、国際線を中心に路線を展開していく考えを示した。今後は中部空港を第2拠点と位置づけ、成田空港より1時間東南アジアに近い強みを活かし、国際線の路線拡充をはかる。新路線は採算性と継続的な成長性、現地発の潜在需要や空港の使いやすさを踏まえて検討していくとした。

 一方、GKの鈴木氏は国内線路線網を強化し国内での基盤を強化する考え。既存路線の便数を増やし、利用者の定着とリピーター化をはかるという。また、関西国際空港の拠点化をめざした整備を進めていく計画だ。なお、シンポジウム開催後の今年1月には、3月31日から中部/新千歳線、福岡線を、5月31日から中部/鹿児島線の運航を開始する計画も発表している。

国土交通省航空局長の田村明比古氏  こうしたLCC2社の路線戦略に対し、国土交通省航空局長の田村氏は「低価格で航空機が利用できるLCCのネットワークが広がることは望ましい」と述べ、LCCの路線拡大で新規需要が生まれるとともに、旅行者の選択肢が増えると評価した。

 ただし、LCCの路線が一定の幹線路線に限定される可能性には懸念を示す。特に地方路線については「航空路線が少ない地方ほど利用者の選択肢が少なくなり、悪循環的な地方の衰退を招いている」と指摘。また、フルサービスキャリアの幹線路線の運賃の低減化への圧力についても「太い路線で(収益を)支え、細い路線を維持していた航空会社が今後どうなっていくのか、という問題も出てくる」と述べ、地域活性化につなげるため「地域と航空会社が共同で観光の誘致の形をつくる試みや環境整備を支援していきたい」とした。