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観光産業政策検討会、生産性向上や人材育成を論点に-第2回会合

  • 2012年10月31日

 観光庁は10月31日、観光産業の強化を目的とする「観光産業政策検討会」の第2回会合を開催し、年度内の提言取りまとめに向けて論点を整理した。今回は第1回で出された意見を元に主に5つの論点に集約し、生産性の向上や人材育成、サービス品質の維持と向上による観光面での“日本”ブランドの確立などについて議論を深めていくことを確認した。

 第2回会合では、ジェイティービー代表取締役社長の田川博己氏が欠席したこともあってか話題がほぼ宿泊業に集中したが、「観光サービスの品質の維持・向上を通じた日本ブランドの確立」「旅行産業におけるマネジメント・生産性等の改善・向上」「宿泊産業におけるマネジメント・生産性の改善・向上」「IT技術の発展、旅行の安全に対するニーズの高まり等新しい事象への対応」「観光産業における優秀な人材の確保・育成」を軸に現状の課題が指摘された。

 委員から出された意見のうち、旅行業にも関わる部分では、トップツアー執行役員の百木田康二氏が、インバウンドオペレーターの法制化について必要性を強調。このほかでは、例えば生産性の向上について、そもそも労務管理、時短、有給取得の促進など一般的な他産業ではすでに当然とみなされているような点も十分にできていないことが指摘され、こうしたことから「逃げず前向きに」取り組もうとする経営者が1人でも多く出てくることが重要とされた。また、労働時間が長いほうが勤勉とされるような意識の改革が必要とする声もあった。

 また、人材育成については、「経営者層の人材を育成することに目が行くが、若手を育てること」に目を向けるべきとの意見があったほか、百木田氏は旅行業界での女性管理職の割合が日本の平均を大きく下回るとの分析を示し、「(この原因を)真剣に紐解く必要ある。場所や時間を選ばない働き方に変える必要もある」と語った。

 一方、IT関連では、楽天トラベルで役員を務めた経歴を持つ百戦錬磨代表取締役社長の上山康博氏から、旅行業経営者のIT技術に関する知識が乏しいとの言及もあった。例として、募集型企画商品を造成する場合にパンフレットありきで着手するため、パンフレットが出た後にウェブサイトが更新されるようなケースがあり、さらに掲載可能な情報量が限られるパンフレットを基準にするため、本来は写真などのデータを大量に紹介できるインターネットの強みが生かされていないと指摘。上山氏は「ネットの売れ筋を把握してから紙の投資をするのが普通」であるとし、慣習に縛られてビジネスモデルを変革できない点を問題視した。

 なお、検討会では残り2回の会合を経て2013年3月の提言取りまとめをめざすが、今回の議論では、政策として観光庁や地方自治体と民間事業者それぞれが担うべき役割を明確化して政策を決定するべきとの意見も多く出された。この中では「持続可能な経営の支援」を求める声が複数聞かれたほか、市場が成長していない中で、競争環境にある民間企業のうち2割のトップランナー、6割の平均的集団、2割のそれ以外について、どの層に誰がどのような目的を持って何をするかを明確化するべきとする意見もあった。