トップインタビュー:ハワイアン航空CEO マーク・ダンカリー氏

  • 2011年8月8日

拡張計画を着実に実行、旅行会社との連携とサービスを武器に

 2010年11月の羽田就航で日本市場に初進出し、その後、約半年で関空への就航を果たしたハワイアン航空(HA)。東日本大震災後も、計画通りに関空に就航することを表明し、同月に羽田線の大型化も実行するなど、日本路線の拡張を継続している。さらに日本だけでなく、韓国や豪州を含めたアジア戦略も順調に進んでおり、インターアイランド間のネットワークも広げる計画だ。7月13日の関空線就航に合わせて来日したHAの代表取締役兼CEOであるマーク・ダンカリー氏に、日本路線の評価と今後の見通しについて聞いた。



-まず、羽田就航後の推移と評価をお聞かせください

マーク・ダンカリー氏(以下、敬称略) 2010年11月に就航してから約半年が経過したが、現在まで3つの期間があったと考えている。第1期が就航から東日本大震災が発生する前までの期間で、非常に良い成績を残せた。日本発のレジャー需要も旺盛で、就航にあたり、多くの方によく利用していただいたと思っている。

 第2期は震災後からの数ヶ月間だ。この間は旅客数が減少した時期で、20%から30%減の影響があった。ただし、このような大災害の後に需要が落ち込むのは当たり前のことだと考えている。長期的に見れば羽田線の市場は非常に優れている。だからこそ就航したのであり、震災後もそれ以前と同じサービスレベルを維持していくことが正しいと信じて、実施していた。

 そして今が第3期で、リカバリー期に突入したと考えている。需要はかなり伸びてきていて、だからこそ計画通り、7月7日から機材をエアバスA330-200型機に大型化した。今夏の予約状況には満足しており、地震前の稼働率に回復しようかというところまで来ている。


-この状況で、デイリーでの就航を決行した、関空線への期待をお聞かせください。また、販売状況はいかがですか

ダンカリー 羽田線は首都圏近郊の需要がメインとなるが、関空線は大阪と関空近郊のエリアに加え、パートナーである全日空(NH)のコネクションを通して、乗継需要に焦点をあてている。7月13日に就航した初便のロードファクターは70%台で、今後は需要が伸び、80%台になることを予想している。

 先にも述べたが、震災後にしばらく旅行を手控えすることは理解しており、長期的に見れば日本市場のハワイ旅行市場のレベルは戻る。もともと、同路線は十分な需要があると確信をもってはじめた計画であり、それは今でも変わっていない。この考えを元に、関空線の計画も現状維持で断行し、その結果、良い成果をあげることができた。初便の搭乗率は大きな成功を意味していると捉えている。これは、われわれだけの成功だと思っていない。日本の旅行会社の協力を得られたおかげであり、夏の予約状況の結果にも表われている。


-旅行会社の協力があってこその成果とのことですが、直販と旅行会社経由の販売比率は

ダンカリー ほぼ100%、旅行会社経由だ。旅行会社数社と密な関係を築いており、関空線の就航や羽田線の大型化も、共同で計画を策定したものだ。

 日本人の旅行客がハワイ旅行をする際、いまでも旅行会社を通じての予約が多い。アメリカ本土の旅行者はほとんどが直接予約なので、各市場での販売戦略はまったく異なる状況にある。しかし、大切なのは、各市場の消費者にとって購入したいと思う商品を用意することだと思っている。


-日本発国際線のなかで、ホノルル線は多数が参入する競合の激しい路線ですが、御社ではどこに競争力を持たせていますか

ダンカリー まず、ハワイに拠点を置く航空会社として、われわれしか体験できない本物のハワイアンサービスを提供することをアピールしていく。日本の旅行者はハワイ旅行で、美しい景観や現地の文化、温かいもてなしを楽しみにしているが、われわれは空港で搭乗してからも、そんな体験をしてほしいと考えている。

 実際、日本の方々に快適な旅行をしてもらうために、かなりの努力を重ねてきている。例えば機内食はすべてのサービス内容を日本市場向けに組み立てており、日本食とハワイの料理を融合したメニューを提供している。また、機内で配布するブランケットにハワイアンキルトを採用したり、機内誌も日本語表記にしただけでなく、日本だけのバージョンを用意している。


-インターアイランドのネットワークも優位点かと思います

ダンカリー 7月初旬に、B717型機を3機、購入することを発表した。これらを活用し、インターアイランド間のフライトを増やす計画だ。それは日本を含め、アジアの旅行客を送客していくことも予定している。

 昨年10月末に日本航空(JL)のコナ線が撤退した影響からもしれないが、おそらく日本人旅客の3分の1から2分の1程度はオアフ島以外に行っているのではないか。ただし、日本路線はまだ半年の経験しかなく、トレンドはある程度の時間がたたないと分からないものがある。今後もこの傾向が続くかどうかを注視していかなくてはならない。


-今後、日本路線を拡張していく予定はありますか

ダンカリー まずは関空路線の推移を注視する。ここでかなり大きな成功があれば、間違いなく日本路線を増やすつもりだ。ロードファクターの結果だけでなく、財務的な成功も必要となる。羽田線に関しては、就航前に初年度のロードファクターの目標を平均75%としており、震災の影響で短期的にレベルは落ちたが、結果的には達成できると考えている。


-日本路線の拡張は、御社が力を入れるアジア路線の一環だと思うのですが、今後のアジア戦略の展開と、日本市場とのバランスをお聞かせください

ダンカリー 日本だけでなく、他のアジア路線も拡張していく。仁川線は週4便からデイリー運航に増便し、シドニー線も週5便から週7便に増便した。半年以降先になるが、追加路線も発表できるだろう。中国市場はエキサイティングだが、参入が難しい市場だ。特にアメリカ政府はビザ発行に厳格なハードルを設けている。この問題にいつか対処してくれることを期待している。

 今後、B717型機3機に加え、来年にはB767型機を2機、リース会社に返却するが、A330型機を5機導入する。拡大する準備はできている。幸いなことにこの数年、良い業績を残すことができ、新市場に新機材で参入することができている。これはすべて、HAの社員のおかげだと思っている。

 社員の頑張りが、コスト管理の徹底と本物のハワイアンサービスの提供につながり、この品質の高いサービスに対する需要を得ることができた。十分に検討して決めた計画については社員を信じ、自信を持って進んでいく。そうすれば最終的に結果を得ることができていると考えている。実は、アメリカの航空会社でもっとも高いロードファクターを維持しているのは、ハワイアン航空なのだ。


ありがとうございました