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全日空LCC、圧倒的低運賃で潜在需要開拓−井上社長、3年で黒字化に意欲

  • 2011年2月14日
 全日空(NH)と香港のファーイースタン投資グループが共同出資した、格安航空(LCC)事業の「A&F・Aviation」が2月10日付けで設立登記した。これにあわせ開催した記者会見で、A&F・Aviation代表取締役CEOの井上眞一氏は、「日本初のLCCとして圧倒的な低運賃をてこに新しい航空需要を掘り起こしたい」と述べ、「特にこれまで飛行機を利用しなかったプライスコンシャスなアジア人を取り込みたい」と語った。また、こうした需要の取り込みや低運賃の提供により、「3年目で単年度の黒字化、5年目で累積損失を一掃したい」と意気込みを示した。今後、事務所の開設や人材採用を進め、3月以降に就航地や運賃、機体デザインや客室乗務員の制服などのブランドについて発表する予定だ。

 井上氏によると、運航開始は2011年下期をめざしており、国内、国際それぞれで3、4路線に就航する計画だ。「まずはショートホールで成功させたい」との考えで、関西国際空港から4時間圏内で運航可能な東アジアや東南アジアへの就航を検討する。関空を選んだ理由として、24時間空港であることや、国内外への運航が可能なこと、政府の成長戦略会議でLCCにとって利便性の高い空港をめざすことが決定したことのほか、活用できるスロットがあることなどを挙げた。また、関空を拠点とするNH路線が多くないため、競合性が低いこともあるようだ。機材は、座席数約200席程度の単一機材をリースして使用する。5年後には15機から20機程度まで増やし、年間の航空旅客数を600万人まで伸ばす見通しを示した。

 また、「大手航空会社の半分程度」という低運賃の提供に向けて、井上氏はコストも「NHの半分程度」に抑えると意欲的だ。例えば、NHは機材の稼働時間が1日あたり7、8時間であるのに対し、一般的なLCCは約12時間と長く、座席数も同一機材であってもLCCのほうが多いことから、新会社でも運用効率を最大限に高めることでコストを抑制する。人件費についても、先行する欧米のLCCを参考にする。例えば、ルフトハンザ・ドイツ航空(LH)とライアンエアー(FR)を比べると、実はFRの方が1人あたりの人件費が高いが、これは優秀な人材が1人で複数の役割を担うためで、結果的にコストパフォーマンスの面で優位にたてるという。一方、整備関係は外部委託も検討している。

 なお、海外のLCCが日本へ進出し始めているが、同社では国内線運航を強みに差別化をはかる。一方で新幹線や深夜バスといった他交通機関との競争も見込まれるが、「圧倒的な低運賃」を武器に消費者に選ばれるLCCをめざすという。「(流通の)コストが増え、低運賃を提供できなくなるとビジネスモデルが死んでしまう」ことから、販売は主に自社ウェブサイト経由とする予定。ただし、低運賃を実現できる関係が成り立てば、旅行会社を通じた販売についても柔軟に対応する考えを示した。