「SuperApp」がアジアで続出、旅行産業との関係は-ITB Asiaから

  • 2019年10月18日

講演用のパワーポイントから (シンガポール発:行松孝純) 10月16日にシンガポールで開幕した「ITB Asia 2019」では、17日の「トラベル・テクノロジー」のステージで「SuperApps for Travel」と題したセッションが実施された。講演を務めたのは、LINEとともに「LINEトラベルjp」を共同運営している、ベンチャーリパブリックの代表である柴田啓氏。柴田氏は日本人の生活に浸透したメッセージアプリの「LINE」を、多機能化した日本発の「スーパーアプリ」としてアピールするとともに、スーパーアプリが旅行業界に与える影響について解説した。

 柴田氏は冒頭で、比較検索サイトの「トラベルジェイピー(Travel.jp)」を運営していたベンチャーリパブリックが、昨年にLINEとの協働によって「LINEトラベルjp」を開始した結果、同サービスの公式アカウントが1年強で1900万人の友だちを獲得するとともに、結果的には「LINE」が1日あたり数千件の旅行予約を生み出していることについて説明。「LINEはもはや『メッセージアプリ』の枠を超えた『スーパーアプリ』と化した」と述べ、日本人の生活や旅行に大きな影響を与えていると主張した。

柴田氏  「スーパーアプリ」の概念について語るにあたっては、LINE以外の好例として、中国のWechatと韓国のカカオトークを挙げ、「北アジアのメッセージアプリが世界をリードするスーパーアプリとなっている」と説明。いずれも1つのメイン画面に多くの機能がずらりと示されている点が、ともに10億人以上のユーザーを持ちながらスーパーアプリ化していない、米国のWhatsAppやFacebook Messengerとは大きく異なると指摘した。

 スーパーアプリ化しているその他のアプリとしては、シンガポール発のGrab、インドネシア発のGojek、インド発のPaytm、中国発のアリペイと美団を紹介。「すべてがアジアから生まれている」と述べるとともに、それぞれが配車やチャット、決済、口コミなどのアプリから多機能化して、人々が手放せない存在に変わりつつある状況を説いた。スーパーアプリの定義については「『体験』のためのスイス製アーミーナイフ」と例えた上で、「人々が毎日、すべてにおいて使用する、支配的なモバイルアプリプラットフォーム」と明確化した。

 スーパーアプリと旅行の関係については、LINEに限らずWechatも中国のOTAのeLongとの協働により、1日あたり10数万単位のフライトおよび客室予約を生み出していることを紹介。スーパーアプリが「提携によって旅行業を走らせる」存在であると強調した。

講演の様子  そのほか、旅行や比較検索の分野ではモバイル端末よりもパソコンへの依存度が高く、かつ9割近いアプリがダウンロードの1週間後には使われなくなる日本では、旅行関連業者が単独でアプリを開発することは負担が大きいことを説明。そのような状況だからこそ、LINEとベンチャーリパブリックが協業して、関連業者も参画できる新たなプラットフォームを構築したことには、大きな意味があるとの見方を示した。

 「ITB Asia 2019」は18日で全日程を終了。来年は10月21日から23日にかけて開催する予定で、今年から併催している「MICE Show Asia」に加えて、さらに「Travel Tech Asia」も追加することが決定している。メッセベルリン・シンガポールのマネージング・ディレクターを務めるカトリーナ・レオン氏は、「ITB Asiaは引き続き、地域を代表する旅行商談会であり続ける」と意気込みを示している。