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女性役員を旗頭に実行、JTBの働き方改革とダイバーシティ推進

高崎氏  「働き方改革」や「ダイバーシティ推進」に関する話題が連日、メディアで報じられている。これらは人口減少と高齢化が進む日本で企業が活動する上では重要な課題の1つであり、旅行業界においても取り組みが求められているが、昨年4月に総社員数約3万人のJTBグループでその課題への取り組みを託されたのが、JTB本社では初の女性役員となった執行役員人事部働き方改革・ダイバーシティ推進担当の高崎邦子氏(高ははしご高、崎はたつざき)。初めての東京勤務で、自身も新たな働き方について模索しているという高崎氏に、現在の取組状況や今後の見通しについて話を聞いた。

-JTBにおける働き方改革とダイバーシティ推進の意義を、どのように捉えていますか

高崎邦子氏(以下敬称略) JTBグループは昨年4月に経営体制の再編に踏み切り、同時にカルチャー改革、つまり企業風土の改革にも本格的に取り組み始めました。カルチャー改革を進める理由は「現在と同じことを続けるだけでは将来はない」という危機感で、具体的には「働き方改革」「ダイバーシティ改革」「評価マネジメント改革」「キャリア改革」「コミュニケーション改革」の5つの改革を目標として掲げています。いずれもJTBの未来にとっては欠かせない要素で、どれかが欠けてもカルチャー改革にはなりません。

-重責を担う役割を、新設の執行役員という形で託された感想は

高崎 5つの改革には明確な線引きがあるわけではなく、それぞれが関係し合う内容なので、それぞれを縦割りにして取り組むよりも、1人で担当する方が理に適っています。また、JTBの初の女性執行役員として注目されていますが、そもそもJTBグループのカルチャー改革は、全社員の6割以上を占める女性にとっても分かりやすく、納得いくものでなくてはなりません。改革のための会社からのメッセージとして、女性の私を任命したのだと理解しています。

 私は1986年に男女雇用機会均等法の1期生として入社し、教育旅行の営業担当から始めましたが、当時は周りにほかの女性がいない環境でした。その後、例えば関西営業本部の広報課長を任された時も私以外に女性はおらず、相談できる相手がいないような気がしました。後から考えると、上司に相談すれば「なあんだそんなことか。それならこう解決しよう」と言ってもらえたようなこともなかなか言い出せず、自分で解決しようと無理をして、気持ちが爆発しそうになったときもありました。

 私自身もそんな経験をしているので、現在取り組む働き方改革とダイバーシティ推進を通して、後に続く女性たちが仕事しやすい、特に男女の差異を意識することがない、仕事に100%邁進できる環境を整えたいと考えています。

-3万人近い大所帯の改革を担う難しさは感じますか

高崎 JTBは100年以上の伝統を持つ会社で、もちろん良いカルチャーも沢山あります。それらを守りつつ、変化に対応した新たなカルチャーを根付かせていくことには大きなやりがいを感じています。JTBが次の時代になっても、社会にとって必要と思われる会社として存続するようなカルチャーを根付かせていくことは簡単ではないと思いますが、取り組む価値のあるチャレンジだと考えています。

 私は昨年の2月まで、JTB西日本で教育旅行神戸支店の支店長を務めていたので、現場の気持ちは理解できていると思います。改革はアカデミックなものではなく、現場に適応した、JTBならではの改革でなければ本末転倒になるので、あくまでも現場を中心に考えています。現場の社員たちにとってその意味を実感できる、腹落ちできる改革を進めていきたいです。